「再出発の場がアジア最大規模の上海国際映画祭で幸せ者です」=『ぼくが生きてる、ふたつの世界』呉美保監督

CRI online    2024年6月22日(土) 14時30分

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開催中の第26回上海国際映画祭のメインコンペティション部門に正式出品された『ぼくが生きてる、ふたつの世界』が21日に上海市内でワールドプレミア上映され、舞台あいさつも行われました。

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6月14日から23日まで開催中の第26回上海国際映画祭のメインコンペティション部門に正式出品された『ぼくが生きてる、ふたつの世界』(呉美保監督、吉沢亮主演)が21日に上海市内でワールドプレミア上映され、舞台あいさつも行われました。映画祭のために上海を訪問中の呉美保監督にCMG記者がインタビューしました。

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Q.このたびの中国訪問は何回目になりますか? 上海の街や上海国際映画祭に対してどういう印象を持たれましたか?

呉監督:上海は2度目です。15年前には観光で来ました。2010年の中国国際博覧会の直前で、街のあちこちで工事が行われていて、街全体からものすごい活気を感じました。上海国際映画祭では去年、私の大学の先輩でもある熊切和嘉監督の映画『658km、陽子の旅』が、最優秀作品賞、最優秀脚本賞、最優秀女優賞の3冠をいただきましたよね。その報道を目にして「すごいなあ熊切さん」と、ただただ感動していたので、まさかその場にお呼びいただける日が来るなんて、とても恐縮しています。

呉美保監督

Q.『ぼくが生きてる、ふたつの世界』は呉監督の9年ぶりの長編映画であると同時に、第26回上海映画祭の金爵賞メインコンペティション部門に出品され、上海でワールドプレミア上映されることになりました。それについて、お気持ちはいかがですか? 何か期待されることはありますか?

呉監督:世界初上映が上海国際映画祭というのがとてもうれしいです。私は在日韓国人ということもあり、以前から日本のみならず、アジアという大きな舞台で、より多くの方々に自分の映画を見ていただくのが夢でもありました。9年というブランクを経て、その再出発の場がアジア最大規模の上海国際映画祭金爵賞メインコンペティション部門への出品というのは、身に余るぜいたくですし、(私は)幸せ者です。

Q.この映画を作るきっかけは何でしたか? 映画を通して伝えたかったことは何ですか?

呉監督:最初にプロデューサーから原作を渡されました。CODA(「Children of Deaf Adults」の略で、聴覚障がい者の親に育てられている子や、育てられた人)の方が書かれた自伝的エッセイで、確かに特殊な環境で育った人の人生ではあるけれど、読み進んでいって、決して特別な物語ではなく、多くの人の心の中に存在する親への苦々しい感情が詰まった、非常に普遍的な作品にできるのではないかと受け取りました。また、私自身の姪(めい)が少し前に聴力を失い、手話を学ぶ姿を見ていて、聞こえる世界と、聞こえない世界について身近に考えるようになっていましたので、二つの世界をより深く理解したいなと思い、オファーをお受けすることにしました。

Q.五十嵐大さんの自伝的エッセイを映画化されたとのことですが、エッセイの映画化ということで、何か難しい面はありましたか?

呉監督:ノンフィクションなので、事実と異なる過度な脚色をしてはならないと、当初は事象そのままを脚本家さんと一緒に書き進めていました。ですが、原作者さんが私たちを信頼してくれ、「自由に書いてくださって構いませんよ」と大きな心で受け止めてくださったので、色々とアレンジした個所もあります。でも基本的には大きく手を加えてはいないです。ラストの主人公と母親との怒涛の回想シーンは、初めて原作を読んだ時に最も感情を動かされたエピソードでしたので、そこを映画のクライマックスにしたいと思いました。

Q. 主演の吉沢亮さんは、『キングダム』などによって中国でもファンが多いと思いますが、今回の作品での演技はいかがでしたか?

呉監督:とにかく硬派ですね。ほとんど話すことはなく、ただ淡々と芝居をする。今回は「手話」という大きなチャレンジがあったにも関わらず、とてもスマートに、そして真摯に役と向き合われていました。きっと、陰ではすごく努力をされたのだとは思いますが、現場ではそんな苦労を微塵(みじん)見せませんでした。プロ根性に感服しました。母に反抗し続ける男の子の、なんともぐちゃっと歪(いびつ)な感情の出し方も、やりすぎず、やらなさすぎず、さすがに絶妙な塩梅でしたね。

主演吉沢亮さん

Q.注目されている中国映画の作品や監督、俳優はありますか? 呉監督の映画制作に影響を与えた作品や監督はありますか?

呉監督:ピーター・チャン監督の『ラブソング』は、私にとって生涯のベストムービーです。何度も見て、何度も同じシーンで涙を流しました。チャン監督の『最愛の子』も大好きで、私自身、長男をお腹に授かった直後でもあり、タオルを口に噛み締めて嗚咽して泣きしながら劇場で鑑賞したことを鮮明に覚えています。チャン・イーモウ監督も、もちろん大好きです。「初恋のきた道」ではチャン・ツィイーが恋焦がれる学校の先生が、最初はそこまで魅力的と思えなかったのに、物語が進むごとにどんどんかっこよく見えてきて、最後は(私も)すっかり恋に落ちてしまったことに、映画の魔力を感じました。

Q.新作のご予定がありましたら、ぜひ教えて下さい。

呉監督:日本に帰国したらすぐに新しい映画を撮影する予定です。今まさに、その準備の佳境を迎えています。詳細はまだ言えませんが、来年には完成しているはずですので、今回の上海で私の映画に出会ってくださった方々に、またいつか、新たなチャレンジを見ていただきたいですね。

Q.今後、両国の映画制作や映画交流を盛り上げるに、映画人としてやるべきことはありますか? 若手監督や映画ファンへのメッセージもお願いします。

呉監督:まずは、世界中の映画をたくさん見て、見識を持つことが大切と思います。と言いながら、私はこの9年、息子2人の子育てに明け暮れ、ほとんど映画を見られていません。ただ、今は劇場だけでなく、テレビやパソコンなどさまざまな環境で気楽に映画を見られるようになっているので、忙しい私にとってはありがたいことではあります。でもやはり、映画館で見る映画には、格別な豊かさがあります。モノに溢れた今の時代だからこそ、暗闇の中でスクリーンに没頭するといったシンプルな体験を、若い人たちに味わってほしいですね。私も時間を捻出して、映画館に行きます。(提供/CRI

『ぼくが生きてる、ふたつの世界』

【作品情報】

映画『ぼくが生きてる、ふたつの世界』

日本公開:2024年9月

監督:呉美保

出演:吉沢亮、忍足亜希子、今井彰人、ユースケ・サンタマリア、烏丸せつこ、でんでん

脚本:港岳彦

概要:耳の聞こえない母と聞こえる息子を繊細に描く

原作:五十嵐大「ろうの両親から生まれたぼくが聴こえる世界と聴こえない世界を行き来して考えた30のこと」(幻冬舎刊)

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