安価な中国商品の大量流入でASEAN経済に衝撃―香港メディア

亜洲週刊    2024年8月19日(月) 8時40分

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ASEAN各国では中国の安価な商品が大量流入するようになったことで、消費者には利益がもたらされているが、製造業は打撃を受けているという。写真はタイ国内の靴小売店の一角。

香港メディアの亜洲週刊はこのほど、ASEAN各国では中国の安価な商品が大量流入するようになったことで、消費者には利益がもたらされているが、製造業は打撃を受け、多くの工場が閉鎖され失業者が出ていると紹介する記事を発表した。以下は同記事の主要部分を日本人読者向けに再構成したものだ。

東南アジアの繊維産業は中国製品の衝撃に直面している分野の一つで、インドネシアではバンテン州、西ジャワ州、中部ジャワ州の多くの繊維、衣料、靴工場が閉鎖され、数万人が失業した。インドネシア政府は繊維業やその他の業界の業者の要望に応えて、輸入生地などに最大200%の関税を課すことを検討している。

タイも中国の安価な商品の流入に衝撃を受けており、ここ1年間で2000社近くの製造業企業が倒産しており、その数は以前よりはるかに多い。

タイは複数の中国電気自動車メーカーを相手に工場設立のための投資を誘致しているが、中国企業はタイ製の部品をあまり調達していない。また、タイの自動車市場では価格競争が発生し、長年にわたり現地生産を行ってきた日本の自動車の販売が大きな打撃を受け、減産や工場撤退を迫られつつある。8月14日に退任したタイのセター・タウィーシン首相は在任中に、タイの製造業は縮小してしまっており、生産能力利用率は60%以下に低下していると明言した。タイの専門家からは、中国が輸出していない製品の製造に集中すべきとの声も出ている。

ネット通販により中国の業者が東南アジアに直接に商品を販売するようになったため、東南アジアでは小売業者などが仕事を奪われている。よく使われる電子商取引(EC)プラットフォームには、中国系のTikTok(ティックトック)やLazada(ラザダ)以外にも、シンガポール資本のShopee(ショッピー)もある。

そのため、多くの国の政府はECプラットフォームへの対策を取るようになり、例えばマレーシア政府は年初にネット通販による比較的低価格の一部の輸入商品に10%の関税を課すようになった。タイ政府も7月に、一部の低価格輸入品に7%の付加価値税を課し始めた。

中国は不況であるために、東南アジアの商品に対する需要は限定的な状態だ。一方で、中国企業は処理すべき過剰在庫を抱えている。東南アジアと中国の貿易不均衡が拡大したことで、東南アジア各国の企業から、中国製品の輸入に対する自国政府の行動を求める声が上がっている。

エコノミストの試算によると、昨年には東南アジアやその他の新興アジア市場が中国の輸出の3分の1を吸収した。ASEANの対中国貿易赤字は、新型コロナウイルス感染症対策期間中には800億ドル(約11兆8000億円)だったが、現在では1150億ドル(約17兆円)にまで拡大した。

中国と東南アジアの貿易構造は、中国と西側諸国の関係が緊張している影響も受けている。多くの生産ラインが中国から東南アジア諸国に移転したことで、中国国内では東南アジア産の原材料や半製品などに対する需要が低下した。サプライチェーン移動に伴って東南アジアから中国への輸出が減速したことで、例え24年第1四半期(1-3月)の東南アジアの米国向け輸出額は中国向け輸出額を100億ドル(約1兆4800億円)以上上回り、長年にわたり続いた、東南アジアにとって最大の輸出市場が中国だった状況が中断した。

東南アジア諸国にとっては、中国から押し寄せる低価格商品が大きな市場シェアを獲得する状況を軽減するためには、関税という手段に訴える以外に、企業や政府が効率を高め、コストを下げ、品質を向上させることで、中国製品に対抗できる競争力をつけねばならない。(翻訳・編集/如月隼人

※記事中の中国をはじめとする海外メディアの報道部分、およびネットユーザーの投稿部分は、各現地メディアあるいは投稿者個人の見解であり、RecordChinaの立場を代表するものではありません。

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