中国酒「白酒(バイジウ)」業界にタイプによる明暗、若年層の「回帰現象」も

上海嘉世営銷諮詢有限公司    2024年8月25日(日) 18時30分

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市場分析や総合コンサルティングを営む上海嘉世営銷咨詢有限公司(MCR)はこのほど「2024白酒業界簡易分析リポート」を発表した。「白酒(バイジウ)」とは中国の伝統蒸留酒を指す。

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中国の「白酒(バイジウ)」とは、伝統的な蒸留酒のことだ。日本で中国酒と言えば紹興酒が有名だ。紹興酒は「黄酒(ホワンジウ)」と呼ばれる醸造酒の一種で、黄酒が愛飲される地域は上海市、浙江省、江蘇省などの比較的狭い範囲だ。一方、全国規模で飲まれているのは白酒だ。従って白酒業界の現状を知れば、中国の伝統酒産業の状況をほぼ知ることができるし、酒文化、あるいは中国社会全体における伝統と新たな要素のせめぎ合いも見えて来る。本稿は、上海に拠点を置いて市場分析や総合コンサルティングを営む上海嘉世営銷諮詢有限公司(MCR)による「2024白酒業界簡易分析リポート」の主要部分に、一部で日本人読者向けの情報を追加するなどで再構成したものだ。

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全体として低調だが価格帯により違いも

現在の業界を取り巻く環境としては、2022年末に感染症対策が大幅緩和され、23年には宴会需要が引き続き伸びたが、高級酒を用いる接待や贈答などによるビジネス需要は依然として回復過程にある。さらに詳しく論じるならば、23年上半期には需要に勢いが出たが、5月に入ると需要の伸びについて悲観的な見方が急速に広がった。同年10月の経済刺激策も需要を本格的に伸ばすことができず、全体として低調だった。場面別の現状は次の通り。


1)不況が進行したことで、ビジネス消費が低迷した。「震源地」となった業界は不動産業界で、川下・川上分野にも影響が波及した。医療、教育、金融なども影響を受けた。

2)宴席関連の需要は依然として高く、構造的にも上向きだ。追い風を受けたブランドとしては、剣南春、古井貢酒、郎酒などがある。

3)多くの地域で、300元(約6000円)以下の酒が多く選ばれるようになった。ただし安徽省や江蘇省など、比較的高級な白酒が好まれる地域もある。

23年の白酒の卸売価格では、200-300元(約4050-6080円)の中級酒や、300-400元(約6080-8100円)の下位クラス準高級酒は、結婚式や誕生日、卒業祝いなどの宴席需要が引き続き好調であったことで卸売価格が回復し始め、23年の下半期には堅調な推移を示した。

一方で、500-600元(約1万100-1万2200円)の上位クラス準高級酒や800-1000元(約1万6200-2万300円)の高級酒は3月以降に価格が下落し、年間を通じて低迷した。2000元(約4万500円)以上の超高級酒は、3-4月や6-7月の閑散期、さらに主要な祝日前は卸売価格が目立って下落したが、年間を通しては比較的安定した動きを見せた。

不調だった中小メーカーの中にも「特色化」で成功した事例

白酒業界の23年第1-3四半期の売上高は前年同期比16.12%増の3076億4600万元(約6兆2300億円)で、うち第3四半期の売上高は前年同期比15.32%増の945億4000万元(約1兆9200億円)だった。


酒のランク別では、23年第1-3四半期の売上高の増加率は、地域を代表する最高級酒を製造する企業が19.53%と最も大きく、高級酒メーカーでは17.00%増、準高級酒メーカーは10.89%増、それより低いランクの酒を製造するメーカーは7.60%増だった。

中小の白酒メーカーの多くは苦戦したわけだが、「特色化改革」により、「小さくても素晴らしい酒造会社」に脱皮しつつあるケースもある。例えば古貝春、古貝元、国蘊の3ブランドを有する山東省に本社を置く古貝春集団は、文化面の特色を強調し、消費者に「没入型体験」を提供したことが奏功して、23年の白酒売上高で前年比16.03%増を達成した。

高級酒は価格の維持にほぼ成功

白酒酒造会社は24年の春節後、在庫調整や価格維持に比較的成功した。高級酒で有名な「五粮液」社の比較的低価格ブランドである普五は春節後も価格が安定し、市場予想をやや上回る状態を維持した。年間を通じてでは、960元(約1万9500円)以上の価格で安定する見込みだ。1000元台の価格帯になり、準高級酒の価格も徐々に上昇すると期待される。

23年第1-3四半期の高級酒の卸売価格は、マクロ経済の回復が緩やかな中で、わずかに弱含みになった。業界で指標とされる飛天マオタイ酒の卸売価格は2650元(約5万3700)から2800元(約5万6700円)の範囲でわずかに上下した。その他の高級酒は供給量が増えたために卸売価格がやや下落したが、依然として合理的な範囲内にある。五粮液は理性的で現実的なアプローチにより、卸売価格が狭い範囲で変動する中で積極的に販売をおこなっている。同じく高級ブランドの国窖は、五粮液に追随する量販価格戦略を取っており、卸売価格は880元から900元の間で、全体として安定している。


これら三大高級酒とされるマオタイ酒、五粮液、国窖はいずれも価格戦略を優先し、卸売業者に対する出荷の割り当て調整や、デジタル技術を利用した需要動向のリアルタイムでの把握などを用いて供給と需要のバランスを保ち、卸売価格を合理的な範囲内に維持することで、流通価格体系と市場の推移の安定を図っている。

若者の「白酒離れ」は事実ではなかった

中国では、洋酒文化にあこがれる若者の「白酒離れ」が取りざたされていたが、『2023年中国白酒業界消費白書』によると、過去5年間で白酒には20%の新しい消費者層が流入し、その83%が1995年以降に生まれた世代だ。白酒を飲み始めて3年未満の新たな消費者のうち38%が25歳以下であり、39%が26-35歳とのデータもある。

中国では2020年ごろから、若年層を中心に自国の伝統文化を高く評価し、娯楽や生活に積極的に取り入れようとする「国潮」などと呼ばれる現象が目立つようになった。若年層の「白酒再評価」はこの流れの一環と理解することができる。酒造会社にとっては若者を取り込むことが重要な方向性になるはずだ。


白酒の実店舗での購入には、「急に必要になった場合にすぐ入手できる」「長年にわたり形成された人脈関係の活用」「現場での真偽確認や包装検査の容易さ」などの利点があるが、社会全体の傾向と同様に、白酒消費者はオンライン購入に対して積極的な態度を示している。特に白酒を比較的大量に消費する消費者の78%は、オンラインで購入し自宅にストックしておく傾向がある。

特に地方の小都市の場合には、ブランド力のある酒類を販売する小売店が少なく、消費者の信頼を勝ち取っている店も少ない。また、地方では娯楽の選択肢が限られており、ショートムービーの鑑賞がより多いなど、多くの人がネット利用により親しんでいるなどの状況もある。したがって、酒類のオンライン販売はより重要になると考えられる。

白酒のプロモーション方法としては、インターネットを通じてのボーナス供与や旅行、コンサート、試飲などがある。特に準高級酒ではプロモーション費用の投下が拡大している。また、特定の地域を主たる市場とする地方酒でも、プロモーション費用が増えつつある。高級酒はマオタイ酒を除き、プロモーションの投下が売り上げ面での逆風を受けて収縮している。また、酒造会社は従来、中間流通業者を対象とするプロモーション費用の投下に力を入れてきたが、現在ではネットを利用した末端消費者へのボーナス供与や小売店への報酬を強化するなどの動きがある。(翻訳・編集/如月隼人

※本記事はニュース提供社の記事であり、RecordChinaの立場を代表するものではありません。すべてのコンテンツの著作権は、ニュース提供社に帰属します。

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■上海嘉世営銷咨詢(MCR) 1998年に張吉祥氏が設立。日本企業に専門的で質の高い市場調査サービスを提供している。主な業務内容は業界・企業研究、消費者調査、経営戦略コンサルティング、データ・情報サービス。お問い合わせは石(セキ)[email protected]まで。

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