平和への思いを胸に、新時代の交流を一歩一歩〜書家・篆刻家師村妙石に聞く

CRI online    2024年8月28日(水) 12時20分

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「若山牧水、師村妙石書法篆刻藝術展」が北京にある中国美術館で8月14~24日に開催されました。

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8月14から24日、北京の中国美術館で国際交流展「若山牧水、師村妙石書法篆刻藝術展」が開催されました。日本の書道家・篆刻家である師村妙石氏(75歳)は、1972年の中日国交正常化直後の初訪中以来、篆刻や書を通じた中日交流をライフワークに活動を続けており、中国美術館での個展開催は2008年、2018年に続き、今回で3回目となります。今回の芸術展は、近現代の日本の文化人に大きな影響を与えた中国の画家・書家・篆刻家である呉昌碩(1844~1927)の生誕180周年を記念し、中国美術館、日本中国文化交流協会が主催し、西泠印社、若山牧水記念文学館が共催したものです。

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芸術展には、呉昌碩と同時代を生きた日本の歌人・若山牧水(1885~1928)の直筆の書作品30点のほか、呉昌碩と牧水の2人をテーマに師村氏が創作した書や篆刻、さらに、鐘ヶ江勢二、財前謙、山元宣広も加わり4名の現代書家による和歌の書軸など、計81の作品が展示されました。

また、今回の展覧会を機に、師村氏の寄贈による若山牧水の作品5点が中国美術館に収蔵されました。8月23日、北京を訪れた師村氏に展示に寄せる思いを伺いました。

<書道・篆刻の源流に惹かれ訪中232回>

――師村さんは1972年以来232回も訪中されていますが、その情熱を支えるものは?

1972年10月13日、私は人民大会堂で周恩来総理と面会をする機会があり、全体での記念撮影もありました。周総理の堂々たる姿に接し、中国はすごい国だなということを感じました。それから書道、篆刻の源流である中国に対して興味を持ち、皆さんと交流を重ねるということが続いています。

中国の皆さんは書道、篆刻については自然な形で学んでおられます。さすが漢字の国だと、いつも私は敬意を持って接しております。

<中国美術館に若山牧水の作品5点を寄贈>

――今回の展示会への思いや意義をお聞かせください

日本では、呉昌碩は高等学校の書道の全ての教科書に紹介されています。書道家として、篆刻家として必ず学ばねばならない近代を代表する偉大な芸術家です。私も呉昌碩を若い時から専攻し、書、篆刻について研さんを深めてきました。その呉昌碩をテーマにした展示を中国美術館で開催できることに大きな喜びを感じ、感謝の気持ちで作品制作にあたりました。

中国美術館からの感謝状

近代日本の書家、文学者である若山牧水は、私の故郷である宮崎県出身の偉人です。若山牧水も呉昌碩も日本の教科書に載っていますが、中国では若山牧水のことを誰も知らないという現実があります。

日本の国立博物館などには、呉昌碩をはじめとする中国の近代名家の作品が数多く収蔵されています。しかし、中国美術館が収蔵する日本の作品は、これまで浮世絵などの中世から江戸時代までの作品だけで、近代日本の作品はゼロでした。今回、専門家による3カ月間の討議を経て、若山牧水の5点の作品が全中国の美術館の頂点に立つ中国美術館に収蔵されました。これは歴史的なことです。

近代には、日中間に不幸な時代もありましたが、未来に向かって、若山牧水が平和の象徴、友好の象徴として、中国美術館に飾られたことは大きな足跡を残すものと確信しています。 

<「若山牧水プロジェクト」で双方向の交流を>

――師村さんが手がける「若山牧水プロジェクト」とは?

これは、日本人の書家と中国人の書家が若山牧水を表現するというプロジェクトです。平仮名は中国の漢字の草書体から生まれました。プロジェクトでは、中国の書家は牧水の詩歌の中の平仮名の部分を字母である漢字で表し作品を制作します。音(おん)については日本語で発声をします。和歌は、本来は声に出して成立するものであり、外国語に翻訳して読むものではないからです。

日本には漢詩というものがありますが、これまで中国の書家たちが日本文学を表現することはありませんでした。このプロジェクトで互いに相手国の文学を嗜むという、一歩進んだ新時代の文化交流を目指したいと思っています。昨年8月の東京での展覧会には中国の書道家16名が参加しました。今年12月には香港、来年からは上海青島西安などを巡回します。各地の書道家たちにも新たに加わっていただき、若山牧水の歌を通じて新時代の交流を広げていきたいと望んでいます。

若山牧水、師村妙石書法篆刻藝術展

<平和で明るい時代を共に築きたい>

――芸術が今後の中日関係に果たすべき役割とは?

私たち芸術家というのは、心のつながりを大事にして正直に作品に表現します。そして観る人が共感を得て世の中にプラスになっていく。こういう展開でなければ意味がないと思います。自己満足のための芸術であってほしくない。私はそういう思いで、この中国美術館でこういったチャンスを与えてもらったことを本当に感謝しています。

まずは芸術家同士で同じテーマで交流をしていくということ。そこからそれぞれの地域で、燎原の火のごとく交流が広がっていくことを私は期待しています。日中の間で再び戦いなどが起こらないように、不再戦の誓い、日中人民の世代友好を誓い合うような芸術家同士でありたいと思っています。

若山牧水、師村妙石書法篆刻藝術展

――中国の子どもたちとの交流も積極的に行っていますが、どんな思いを託していますか。

子どもたちとの交流は、新時代から未来へ託す私のメッセージです。過去の過ちは直視しなければなりませんが、不再戦の誓いを持って、明るい時代を共に築き上げてほしい。これは日本の子どもであろうが、中国の子どもであろうが同じです。そういうことを伝えられたらと思っております。(提供/CRI

ワークショップ後に北京の子どもたちと記念撮影

【プロフィール】

師村 妙石(しむら みょうせき)さん

書家、篆刻家。1949年、宮崎県生まれ。1972年に福岡教育大学特設書道科を卒業。現在は北九州在住。

公益社団法人日展の会員と審査員

中国杭州にある「西泠印社」の名誉社員

上海中国画院名誉画師

中日国交正常化直後の1972年10月、友好訪問団として初訪中。2024年8月現在、232回を数える。2018年3月に浙江省嘉興市に師村妙石芸術センターをオープン。

主な受賞暦

日本外務大臣表彰と科学大臣地域文化表彰など多数

主な著書

「篆刻字典」「古典文字字典」「篆刻字典精萃」などを編纂。この内、『篆刻字典 新装版』は、清代より輓近に至る30名の篆刻家の特長をよく表わした刻印文字を厳選、実用的な造本にした総合的字典。見出し字10752字、総字数64102字を収録。

『作品に学ぶ墨場必携〈篆刻 1〉』1992.12 師村妙石編 同朋舎出版

『篆刻字典精萃』 東方書店 1992.2

『篆刻字典 新装版』東方書店 1993.1

『図解篆刻講座呉昌碩に学ぶ』 師村妙石 監修 2013.8

『古典文字字典 普及版』 師村妙石編

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