日中友好議員連盟が5年ぶり訪中=日本人の短期滞在ビザ免除の再開に道―早期政府間交渉を

八牧浩行    2024年9月3日(火) 17時30分

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中国は新型コロナウイルスの感染拡大を封じ込める「ゼロコロナ政策」を23年1月に終えた後も日本向けの免除措置を再開していない。写真は万里の長城。

超党派の日中友好議員連盟が8月下旬に北京入りした。5年ぶりの訪中で、二階俊博会長(自民党元幹事長)以下、自民党の小渕優子選挙対策委員長(同議連事務局長)、森山裕総務会長、立憲民主党の岡田克也幹事長、公明党の北側一雄副代表ら10人が参加した。27日には清華大学を訪れ、同大トップの邱勇・共産党委員会書記と面会。邱氏は「国際情勢は刻一刻と複雑化しているが、中日両国は友好的な隣人(関係)を築いていかなければならない。これが両国指導者の共通認識だ」と強調。二階氏は「世々代々の日中友好を願い、心を込めて植樹したい」と応じ、この後校内で桜の木を植えた。

この後、一行は北京の人民大会堂で中国共産党序列3位の趙楽際全国人民代表大会常務委員長、中国外交担当トップの王毅共産党政治局員兼外相とも会談した。趙氏に日本人の短期滞在ビザ(査証)の免除措置の早期再開を要望したのに対し、趙氏は「日本の各界の要望を尊重し重視している」と返答。二階氏は会談後「前向きな発言だ」と評価し、中国に対して「積極的にアプローチしていく」と語った。中国は新型コロナウイルスの感染拡大を封じ込める「ゼロコロナ政策」を23年1月に終えた後も日本向けの免除措置を再開していないが、免除に向けて可能性が出てきた。中国に拠点を持つ日系企業は早期再開を求めている。

二階氏は日中の政党間の交流を活発化し「日中友好に役割を果たさなければならない」と呼びかけ、趙氏も賛同した。同氏は中国による日本産水産物の全面禁輸や日本産牛肉の対中輸出再開についても提起したが、趙氏は中国側の従来の立場を繰り返した。

米政府、対話を積極化=日本政府は出遅れる

こうした中、米欧など日本以外の政府幹部が頻繁に中国を訪問している。

サリバン米大統領補佐官(国家安全保障担当)は8月末に訪中し、北京・人民大会堂で習近平国家主席と面会した。習氏は「中国と米国の関係をかじ取りするため、バイデン米大統領と意思疎通を続けたい」と述べた。サリバン氏は「バイデン氏が近いうちに再び習主席と意思疎通する機会を楽しみにしている」と語った。

ホワイトハウスはサリバン氏と習氏の面会後に声明を発表。バイデン氏と習氏が電話協議することを確認した。ロシアによるウクライナ侵攻のほか、軍同士の意思疎通や人工知能(AI)の安全性とリスクに関しても協議したという。

グローバルサウスが台頭、欧米閣僚の中国訪問も続く

昨年11月の米中首脳会談以降、米中間では閣僚らが往来して両国関係の安定化と協調を模索している。ショルツ独首相が自動車や薬品など独大手企業の最高幹部によるビジネス代表団を引き連れて訪中。マクロン仏大統領も習主席を国賓として厚遇した。イタリア、ハンガリー、欧州連合(EU)、グローバルサウスと呼ばれる途上国も中国との対話を推進している。

日本の首相・外相の中国訪問は23年4月の林芳正外相(当時)以来、途絶えている。二階氏が次期衆院選への不出馬を表明し政界引退を控える中、多彩な中国人脈を引き継ぐ政治家も見当たらない。山積する課題を前に、日本政府の対中戦略の抜本的な再構築が望まれる。

中国・環球時報は日本外交について「米国追従で中国に敵対的」と批判。「日本政府が正式に日中関係を改善する姿勢を示さなければ、二階氏のような人物に頼っても効果は限定的だ」と指摘する辛口の論評を掲載した。

世界はアジア、中南米、アフリカなどの開発途上国が台頭、グローバルサウスを中心とした秩序へと変貌しつつある。日本も「米中対立」や「民主主義陣営vs.権威主義陣営」といった単純な世界観から脱却する必要があろう。

■筆者プロフィール:八牧浩行

1971年時事通信社入社。 編集局経済部記者、ロンドン特派員、経済部長、常務取締役編集局長等を歴任。この間、財界、大蔵省、日銀キャップを務めたほか、欧州、米国、アフリカ、中東、アジア諸国を取材。英国・サッチャー首相、中国・李鵬首相をはじめ多くの首脳と会見。東京都日中友好協会特任顧問。時事総合研究所客員研究員。著・共著に「中国危機ー巨大化するチャイナリスクに備えよ」「寡占支配」「外国為替ハンドブック」など。趣味はマラソン(フルマラソン12回完走=東京マラソン4回)、ヴァイオリン演奏。

※本コラムは筆者の個人的見解であり、RecordChinaの立場を代表するものではありません。

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