中国でイノシシ被害が深刻化、各地で狩猟に賞金導入などの動きも―中国メディア

Record China    2024年9月29日(日) 17時0分

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中国ではイノシシによる農作物への被害が多発している。また、襲われた人が死傷するケースも発生している。そのため、地方政府の間で捕殺した場合に賞金を支払う動きも出ている。

中国の検索/方法サイトの百度はこのほど、中国では全国規模でイノシシによる被害が深刻と紹介する記事を掲載した。捕獲に賞金制度を導入する地域もあるという。

寧夏回族自治区の西吉県林業および草原局はこのほど、イノシシ狩猟チームを募集し、成獣1頭を狩った場合には2400元(約4万9000円)、無害化処理をした場合には200元(約4000円)の賞金を支払うと発表した。「無害化処理」とは、中国では野生動物の取り引きや食用が禁止されているので、イノシシを再利用不能な状態にすることを意味する。

イノシシの被害が出ているのは西吉県だけではない。国家林業および草原局(以下、国家林草局)によると、中国では全国31省(民族自治区、中央直轄市を含む。台湾、香港、マカオを除く)のうち28省にイノシシが計200万頭生息しており、うち26省で被害が発生している。イノシシによる主たる被害は農作物を荒らされることだ。イノシシが人を襲うことはあまりないが、山間部で一人でいる場合などには襲われることがある。四川省甘孜チベット族自治州では2021年に、45歳男性の村民委員会主任(村長に相当)が山間部を巡回していた際に、イノシシに襲われて死亡した。それ以外にも、人がイノシシに襲われて負傷するケースが時おり発生している。

中国では、自然と生態系を保護することに力が入れられているが、国家林草局は23年6月に、イノシシを「重要な生態・科学・社会価値を有する陸生野生動物リスト」から除外すると発表した。このことは、イノシシが保護対象から外されたことを意味する。国家林草局はイノシシについて、現状の個体数と分布範囲から判断して、数を調整しても種としての存続に脅威はなく、現地の人々の生産と生活に不利な影響が出ていることも考え合わせたと説明した。

ただし、地方政府は生態体系の保護についても配慮しており、例えば西吉県も、県内にある火石寨自然保護区でのイノシシ狩りについては、賞金支払いの対象外とした。

以前は捕殺したイノシシの肉などを「商品」として売ることができたが、20年には野生動物の取り引きや食用が全面禁止された。大きな理由は、重症性呼吸器症候群(SARS)や新型コロナウイルス感染症の流行を鑑(かんが)みて、人が野生動物由来の病原体に感染することを防止することだった。そのため、野生のイノシシを狩っても利益を得られないことになった。イノシシ捕獲などに賞金を出す地方政府が出現したのは、そのためだ。

すでに、賞金により生計を立てようとする人も出ている。その一人である、寧夏回族自治区の住人であるMさんによると、同自治区内だけでなく、新疆ウイグル自治区から招かれてイノシシ駆除を行ったことがある。Mさんは3人のチームでイノシシ狩りを行い、ドローンや赤外線カメラ、猟犬10匹以上も利用する。現地入りして、住人からイノシシ出現の通報を受けてから具体的な行動を開始するという。

Mさんによると、イノシシは狂暴であるために、猟犬が被害を受ける場合も多い。年間では300-400頭のイノシシを狩っているが、猟犬は10匹以上が犠牲になるという。猟犬の価格は1匹当たり1-10万元(約20万-200万円)で、イノシシに反撃されて猟犬が死ねば、Mさんの損失になる。Mさんは、イノシシを狩って賞金を得てはいるが、「金持ちになるのは難しいですね」と語った。

中国各地では、イノシシの狩猟を奨励するだけでなく、イノシシによる農作物の被害や人の負傷を保険の対象にする取り組みも行われている。

広東省科学院動物研究所研究員である中国動物学会の胡慧建理事は、イノシシの被害の問題が深刻化した原因について「現在の(中国の)生態系の中ではイノシシを抑えるトラやヒョウ、クマなどが少なくなっています。加えて、イノシシは環境に耐える力が強く、繁殖能力も高いために、急増してきたのが現状です」と説明した。

胡理事は、イノシシの抑制について狩猟だけを頼りにすべきではないとも主張している。イノシシ狩りに必要な多額の費用の負担も問題と指摘して、イノシシが農作物を荒らさない技術を確立すべきであり、音や映像、匂いなどを組み合わせてイノシシを恐れさせる方法を確立して、一度怯えたイノシシが「半年は来る気にならない」ような状況を作るべきという。

胡理事はさらに、中国以外でもイノシシ対策は難しい問題になっていると説明。欧州諸国は都市部にイノシシが出現する場合があり、イノシシの不妊手術、追い払い、捕殺などで対応してきたが、依然として大きな問題であり続けているという。(翻訳・編集/如月隼人

※記事中の中国をはじめとする海外メディアの報道部分、およびネットユーザーの投稿部分は、各現地メディアあるいは投稿者個人の見解であり、RecordChinaの立場を代表するものではありません。

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