山崎真二 2024年11月4日(月) 16時0分
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米大統領選で共和党のトランプ前大統領と民主党のハリス副大統領のどちらが勝つか。勝者が決まるまでには時間を要する上に混乱が起きることが予想される。
11月5日の米大統領選で共和党のトランプ前大統領と民主党のハリス副大統領のどちらが勝つか。勝者が決まるまでには時間を要する上に混乱が起きることが予想され、最終決着が来年1月になる可能性もある。
多くの米有力世論調査機関によると、10月末現在、全米での両候補の支持率はトランプ氏が若干リード、あるいは互角とされている。また、今回の大統領選の帰趨を左右する接戦7州ではトランプ氏が僅差で優勢との予想が多い。それでも、両者の差は誤差の範囲内であり、「歴史的な大接戦」(米CNN)とみるべきだろう。周知の通り大統領選の勝敗を決するのは候補の総得票数ではなく、全米50州と首都ワシントン(コロンビア特別区)に人口などに応じて割り振られた計538人の選挙人の過半数の270人を獲得できるかである。ほとんどの州では1票でも多く得た候補にその州の選挙人すべてが与えられる。
全米の多くの州では従来の政治傾向から共和、民主党どちらが勝つかおおむね分かっており、今年の大統領選は激戦7州の選挙人をトランプ、ハリス候補のどちらが多く取るかがカギとなる。米有力選挙サイトの情報を総合すると、両候補とも既に獲得確実とみられる選挙人数は220人前後で、過半数の270人に届くには50人足りないとみられている。
ハリス、トランプ両候補が接戦州で選挙人をし烈に奪い合い、「数千票という僅差で勝敗が決まる」(米有力シンクタンクの政治アナリスト)といったシナリオもあり得るので、これら7州でのそれぞれの獲得選挙人がなかなか確定しないことも考えられる。あるいは両候補の獲得選挙人が同数の269で決着がつかない状況も想定される。いったん、各州で両候補の得票票が発表されても、敗者とされた候補の陣営が集計作業のやり直しを要求することもあるだろう。そうなると、前回2016年の大統領選後にトランプ氏が選挙結果を受け入れず、不正選挙だとして法廷闘争を展開したような事態が再び起き、混乱が続くことが起こり得る。もっと複雑で重大な状況に発展するかもしれない。連邦最高裁の判断によって決着した2000年大統領選のような政治ドラマが再現されるとみる向きもある。
この時の大統領選は共和党のブッシュ氏と民主党のゴア氏が大接戦を演じ、選挙人25人のフロリダ州をどちらが制するかで勝敗が分かれる情勢にあった。当初、同州では1784票差で「ブッシュ勝利」の暫定開票結果が発表されたが、僅差の場合に再集計を求めるという州法に基づき、ゴア陣営は手作業による再集計を要求。これに対しブッシュ陣営は手作業による再集計の差し止めを求め連邦地裁に提訴したことから、法廷闘争に発展。最終的には連邦最高裁の判断に基づき、事実上ブッシュ勝利が決まったという経緯がある。最終決着がつくまで投票日から36日間を要したのである。今回もこのようなことが起きないとは言い切れない。
米メディアの間では専門家の意見として別のシナリオも取りざたされている。それは大統領選の勝者が今年中に決まらず、来年1月の新議会まで持ち越される可能性である。通常通りコトが運べばスケジュールは以下の通りだ。11月5日の投開票日の後にハリス氏かトランプ氏どちらかの候補の勝利が決まり、各州の選挙人による投票が12月17日に実施され、その結果が連邦上院などに送られる。そして来年1月6日に開かれる上下両院合同会議で州ごとに投票結果が確定され、次期大統領当選者が正式決定される。新大統領の就任式は1月20日に行われる。だが、今年は12月17日の選挙人投票日までに両候補の獲得選挙人が確定しないことも予想される。その場合には年明けの連邦下院での投票に委ねられる。具体的には50州の代表が1票ずつ投じ、26票を得た候補が当選となる。
ただ、投票は改選後の下院で行われるので、共和党、民主党がどれだけ議席を持つかによって状況は変わる。大統領選だけでなく、連邦議会選で共和党、民主党がどれだけ議席を取るかが注目されるゆえんだ。さらに下院でも決まらなければ、副大統領や下院議長が代行するケースも米メディアの間ではささやかれている。いずれにせよ、今度の大統領選は大接戦だけに11月5日の投票日後も波乱含みの展開になりそうだ。
■筆者プロフィール:山崎真二
山形大客員教授(元教授)、時事総合研究所客員研究員、元時事通信社外信部長、リマ(ペルー)特派員、ニューデリー支局長、ニューヨーク支局長。
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