トヨタのライバル?ブームを起こした中国高級EVのシャオミSU7と理想MEGA

高野悠介    2025年1月27日(月) 18時30分

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中国高級EVのシャオミの「SU7」と理想汽車の「MEGA」はトヨタのライバルとなるだろうか?写真は理想MEGA。

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中国の華夏時報は「レクサスの現地化が現実に?」という記事を掲載した。トヨタ上海に新工場を建設する方向で調整しており、2027年ごろに稼働し、高級車ブランド「レクサス」の電気自動車(EV)を製造する計画だ。テスラ同様、100%独資で運営する。レクサスの24年の中国での販売はすべて輸入で、月間平均1万5000台。中国汽車流通協会によると、レクサスの3年後の価格維持率は65.4%で日本車の中で1位。記事は、トヨタは安定した人気を保持するレクサスを中国生産し、EV開発の新しいパイオニアにしたいようだと伝えた。

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華爾街見聞は「2024年中国十大商業事件」と題した記事を掲載した。その中に自動車のトピックは二つあった。シャオミ(小米)の「SU7」と理想汽車(リ・オート)の「MEGA」が起こしたブームだ。十大商業事件に入るほどのインパクトを中国社会にもたらした2車種の分析は、今年EVの本格展開を目指すトヨタなどの日系ブランドの参考資料となるに違いない。

シャオミSU7


シャオミはスマホメーカーとして短期間で大成功を遂げ、その後IoT家電を幅広く展開した。創業者兼最高経営責任者(CEO)の雷軍(レイ・ジュン)氏は自動車事業への参入について「ラストチャレンジ」「IoTのラストピース」と称した。シャオミのサクセスストーリーの集大成だ。シャオミは21年に完全子会社の小米汽車を設立し、雷氏自ら陣頭指揮を取った。そして24年4月に1号車のSU7の発売に至る。

SU7はなめらかな曲線を描くスタイリッシュな4ドアセダンで、全長/全幅/全高は4997mm/1963mm/1440mm、ホイールベースは3000mm。

バッテリーはグレードによりBYD比亜迪)のリン酸鉄リチウム電池とCATL(寧徳時代新能源科技)の三元リチウム電池を使い分ける。航続距離はリン酸鉄リチウム電池が628~668km、三元リチウム電池が750~800km。デュアルモーターのトップグレードは最高出力673psを発揮。スロットルレスポンスは非常に素早く、力強い加速を実現した。

スマホ出自の会社らしく、車載システムに力を注ぎ、ソフトウエア、ハードウエアのグレードアップを常時サポートし、携帯アプリとのシームレスな接続を実現した。将来、アップルのCarPlayやiPadをはじめ、5000を超えるアプリが利用できるようになる。

自動運転関連では、Xiaomi Pilotという独自のスマートドライビングシステムを搭載。10cmの障害物を感知し、道路状況の変化にリアルタイムに反応できる。

価格は21万5900元~29万9900元(約453万6000~630万円)だが、なかなか公表せず、世論の沸騰を待った。そしておもむろに予想を下回る価格を発表し、サプライズを演出した。マーケティングの鬼才の雷氏らしいやり方だった。

納車台数は発売初月に7058台に達した。女性比率は28%、BBA(ベンツ、BMW、アウディ)オーナー比率は29%、アップルユーザーは52.5%だった。おそらく狙い通りだろう。

理想MEGA


理想汽車は15年に設立。中国新興EVメーカー群「造車新勢力」のトップランナーだ。24年の販売台数は50万508台を記録し、PHEVのLシリーズが好評だった。

24年3月に初の純EV「理想MEGA」を発売した。大型MPV(多目的乗用車)で、全長/全幅/全高は5350mm/1965mm/1850mm、ホイールベースは3300mm。ユニークで前衛的なエクステリアには存在感がある。当初価格は55万9800元(約1176万円)と日本円にして1000万円を超えたが、予約注文は1000台を突破し、このクラスとしては驚異的な数字を記録して大注目を集めた。

四つの急速充電パネル、三つの高解像度スクリーン、マッサージ機能付きフロントシートなど、高価格にふさわしい最新のテクノロジーと豪華装備が採用された。バッテリーはCATLと共同開発し、12分で500km走行分の急速充電が可能。航続距離は710km。

自動運転関連では、Ad Maxという独自のスマートドライビングシステムを搭載。エヌビディアのSoC(システム・オン・チップ)とデュアルオーリン(Dual Orin)X、光学検出装置LiDARを装備した。

躍進と失速、明暗分かれる

シャオミSU7と理想MEGAはどちらも24年に発売し、大きな話題を集めたが、年度実績は明暗を分けた。

SU7の24年12月の販売台数は2万5815台で、24年累計は13万9487台だった。

シャオミ創業者の雷氏は中国的アクの強さの抜けたさわやかな秀才イメージで、シャオミには幅広いファン層のベースがある。そんな彼らの存在がSU7を押し上げたのは間違いない。そしてSU7の仕上がりもファンの期待にたがわぬ出来だった。北京工場の第2期工事も順調で、25年の販売目標を30万台としている。

一方、理想MEGAの24年12月の販売台数は1255台で、24年累計は1万798台だった。

個性的なスタイルが棺桶のようだと指摘され、販売が失速した。理想汽車は悪評を流布されたとして訴訟を起こした。こうした浮き沈みもまた大きな話題となった。理想汽車の創業者兼CEOの李想(リー・シャン)氏は24年末にテンセント(騰訊)のインタビューに応じ、問題点を三つ挙げた。

1.理想MEGAは高級MPVを望むユーザーを魅了したが、5300mmと大きすぎ、SUVなど他車からの乗り換えは限定的だった。50万元(約1050万円)クラスのMPVマーケットは月4000台とみられ、この範囲内のシェアしか獲得できない。

2.EVインフラへの理解不足、充電ステーションの不備。特に二線級以下の都市で遅れた。理想MEGAの所有者は充電に1時間も待てない。先進的充電システムの構築を急ぐ必要がある。

3.運営能力不足。PHEVの理想L9は高級SUVとして成功を収めたが、1000億元(約2兆1000億円)規模に成長した会社を創業者一人では支えきれなかった。

シャオミSU7と理想MEGAの事例は日系メーカーにとって教訓に満ちている。理想MEGAはブランドではなく車だけのストーリーにとどまった。シャオミにはメディアを動員できる強力なブランド力があった。上海でレクサスとテスラの戦いになれば、メディアのセンターポジションとなるのは間違いない。白熱のバトルが見られそうだ。

■筆者プロフィール:高野悠介

1956年生まれ、早稲田大学教育学部卒。ユニー株(現パンパシフィック)青島事務所長、上海事務所長を歴任、中国貿易の経験は四半世紀以上。現在は中国人妻と愛知県駐在。最先端のOMO、共同購入、ライブEコマースなど、中国最新のB2Cビジネスと中国人家族について、ディ-プな情報を提供。著書:2001年「繊維王国上海」東京図書出版会、2004年「新・繊維王国青島」東京図書出版会、2007年「中国の人々の中で」新風舎、2014年「中国の一族の中で」Amazon Kindle。

※本コラムは筆者の個人的見解であり、RecordChinaの立場を代表するものではありません。

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