仏国際放送局RFI（ラジオ・フランス・アンテルナショナル）の中国語版サイトは、中国の輸出戦略がドイツを含む欧米市場にとって大きな脅威になっていると報じた。

記事は、英国の親欧州シンクタンク・欧州改革センター（CER）が研究報告の中で、中国の産業発展がドイツで数百万の雇用喪失を引き起こし、ドイツ経済に深刻かつ不可逆的な影響を及ぼす可能性があると指摘し、急速な産業空洞化を避け、雇用や生産性の大幅な低下などを防ぐために、2月の総選挙後に発足する新政府は貿易、産業、財政政策を緊急に再考する必要があると警告したことを伝えた。

また、新型コロナウイルスの影響でドイツの製造業が低迷を続ける一方で、中国は自動車、民間航空分野で世界的なリーダーとなり、ドイツ製品と同等の品質の商品を提供していると指摘。中国は消費者電子機器、家具、衣料品、家電製品、機械工学の分野でも輸出を増加させており、ドイツの製造業はますます厳しい状況に追いやられつつあるとした。

さらに、中国はクリーンテクノロジー分野でも大きな野心を示しており、特に再生可能エネルギー分野での成長が西方経済に対する脅威になっていると分析。中国が現在建設中の太陽光発電所は180ギガワット、風力発電所は159ギガワットに上り、それぞれ他国の合計の約2倍に相当すると紹介するとともに、政府が土地の権限を掌握しているため、プロジェクトの実施が迅速だと伝えている。

このほか、生産能力至上とも言える中国の輸出戦略はここ数年で過剰生産という問題を生み、余剰在庫の大量輸出など世界市場に深刻な影響を与えていると指摘。一部の業界では「国内需要がないのに生産量が倍増」するに至ったと伝えたほか、特に電気自動車分野（EV）で大きな影響が生じ、米国のカヌーやフィスカー、ドイツのソノ・モーターズといった新興EVメーカーが相次いで破産に追いやられたとした。

記事は、戦略国際問題研究センター（CSIS）のデータとして、安価な労働力や手厚い政府支援、経済規模の大きさといった強みを持つ中国製品の純輸出規模がこの2年間で25倍に増加したと紹介。中国の経済生産額に対する工業補助金支出の割合が、ドイツの5倍に上るとも伝えた。その上で、ドイツにとっては厳しい状況ではあるものの、CERの研究報告が「現在、多くの国々が経済的に中国から独立しようとしているため、ドイツ経済にはなおも回復のチャンスがある」との認識を示し、そのためにはドイツ国内の消費と投資を刺激する措置が不可欠だと指摘したことを紹介している。（編集・翻訳/川尻）