中国で大ヒットしている中国国産アニメーション映画「哪吒之魔童閙海（ナーザの魔童大暴れ）」の興行収入が17日時点ですでに120億元（約2520億円、前売りと海外の興行収入含む）の大台を突破した。

映画専門プラットフォームの最新の予測によると、単一市場における世界歴代興行収入ランキングで、すでに「スター・ウォーズ/フォースの覚醒」を超えた「哪吒之魔童閙海」の興行収入は最終的に160億元を超えるとみられ、世界の歴代映画興収ランキングの順位を5位まで上げ、同ジャンルの興行収入の限界を突破し、同ランキングのトップ10入りした初の英語以外の映画となると予想している。

歴史を塗り替え続ける「哪吒之魔童閙海」の大ヒットで、「メード・イン・成都」にもスポットが当たっている。

アニメ制作の基本となる脚本を手掛けた「成都可可豆動画影視」は四川省成都市の企業で、餃子（Jokelate）監督も四川省出身。エンドロールに流れる中国技術チーム138チームのうち、視覚効果を担当した「墨境天合」、特殊効果を担当した「炬煋文化」、初期のアニメ美術を担当した「画心科技」、3Dシーンレンダリングに関わった「艾爾平方」、キャラクターのアフレコに関わった「声娯文化」なども成都の会社だ。

5年かけて制作され、社会現象を巻き起こしている「哪吒之魔童閙海」が成都で生まれたのはなぜなのだろうか？

その答えは、成都の産業チェーンと文化的背景、革新的なエコロジカルに隠されている。

2005年、初の国家オンラインゲームアニメ産業発展拠点が成都ハイテクパークで発足した。

2022年、成都は全国に先駆けてデジタル文化クリエーティブ産業発展「第14次五カ年計画（2021‐25年）」を発表。デジタル文化クリイエーティブの重要拠点を作り上げることを目標に掲げた。

デジタル文化クリエーティブ産業チェーンが日に日に整備され、車で10分で移動できる範囲に1000億元（約2兆1000億円）級規模の産業クラスターがすでに構築されている。

「成都可可豆動画影視」が入居している天府長嶋デジタル文化クリエーティブパークは、ゲーム・エレクトロニック・スポーツ（eスポーツ）、映画・ドラマ・メディア、デジタルミュージック、超高画質動画といった分野をカバーし、騰訊（テンセント）、抖音（中国版TikTok）、西山居、咪咕音楽を含むデジタル文化クリエーティブ関連企業6000社以上が集まっている。「哪吒之魔童閙海」の特殊効果を担当した「墨境天合」と「成都可可豆動画影視」のオフィスはわずか100メートルほどしか離れていない。

このように成都ではハイレベルなアニメ人材が着々と育成、ストックされている。 中国西部の重要な経済の中心地である成都の24年のGDPは2兆3511億3000万元に達し、中国の都市別で7位だった。うち、サービス業の経済成長に対する貢献率が 70．5％に達した。

発展した経済、比較的安い生活費、住みやすい環境などが魅力の成都には、北京や上海、広州、深センなどから人材が移転し、そこで奮闘する若者たちがクリエーティブコミュニティーを形成している。また、四川大学や電子科技大学といった大学がデジタル文化クリエーティブ関連の学科を開設し、専門人材を育成し、中国国産アニメの人材プールを構築している。

現時点で、成都の映画・ドラマ業界の従事者は10万人以上に達し、映画・ドラマ関連の学科を専攻する学生は22万人に達している。 技術が「柱」なら、文化は「スピリッツ」と言える。文化産業は、単に相乗効果だけで成長することはできず、その育成にはより奥深い文化が必要となる。

「哪吒之魔童閙海」に登場する「太乙真人」の、ひょうきんな四川なまりの中国語や、「結界獣」の三星堆遺跡で出土した青銅の模様、「陳塘関」が竹の椅子に座って盖碗でお茶を飲むシーンなどには、「巴蜀文化」ならでは要素が詰まっている。

成都の包容力や奥深い文化が、独特の気質を持つ成都の人々を育て、クリエート界にインスピレーションを提供し続け、デジタル文化クリエーティブ産業の持続可能な発展のために内生的原動力を提供している。

24年、ハイテクパーク内のデジタル文化クリエーティブ関連企業約6000社のうち、一定規模以上の文化クリエーティブ企業（年売上高2000万元以上の企業）162社の売上高が前年同期比25．2％増の1141億元に達した。

「哪吒之魔童閙海」だけでなく、 オンラインゲーム「王者栄耀（オナー・オブ・キングス）」や中国国産アニメ「十万個冷笑話（笑えないジョーク10 万個）」、アニメ「那年那兔那些事児（その時、そのウサギ、その出来事）」なども成都で誕生した。

大ヒット作が成都で次々と誕生していることは、「哪吒之魔童閙海」が奇跡的な興行収入を記録していることが「まぐれ」ではないことの裏付けとなっている。成都が長年経験を積み重ねてきた必然的な結果として、同作品は、登竜門をくぐり、中国から海外へと進出して、世界の歴代映画興収ランキングの上位に名を刻もうとしているのだ。（提供/人民網日本語版・編集/KN）