<中国で評判になった日本の本>爆買いに疑問?「断捨離」がヒットした背景とは

Record China    2025年2月23日(日) 9時0分

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中国では日本の「断捨離」シリーズの書物の多くが翻訳出版されて注目を集めている。自ら実践する「信奉者」も少なくない。

日本でベストセラーになった本が中国でも大きく注目されることがある。本シリーズでは、書籍の輸出入を手掛ける江蘇省新図進出口社のデータを基に、中国で翻訳出版されてよく売れた日本の書物を取り上げ、評判になった理由や中国人読者が共感した点などをご紹介する。

今回は日本で2018年に出版された「人生を変える断捨離」(やましたひでこ著)を取り上げる。同書の中国語版は2019年1月に「断舎離 新版」の書名で湖南文芸出版社から出版された(中国では「捨」ではなく「舎」の文字が使われる)。中国では日本の「断捨離」シリーズの書物の多くが翻訳出版されて注目を集めている。自ら実践する「信奉者」も少なくない。

中国での「断捨離」人気の背景には何があるのだろう。中国では2019年に発生した新型コロナウイルス感染症と政府による強力な対応策の推進で、長年にわたり続いてきた経済の高度成長にブレーキがかかった。実際の経済成長率は日本よりも高いが、人々の意識の変化は大きかった。それまで物質面での「勝ち組」になることに集中していた中国人が「それでよいのか」と改めて考えるようになったとされる。就職戦線を勝ち抜いて、金銭面で恵まれる良い生活をしようと懸命に努力していた若者の中から「躺平族(寝そべり族)」と呼ばれる人々が出現した。「そんなに努力しても意味がない」という意識の持ち主だ。

ここで興味深いのは、「断捨離」シリーズの中国語版は2010年代前半には出版されており、かなりの数のファンを獲得していたことだ。「断舎離 新版」の紹介文の一つも「新版『断舎離』は、断捨離の創始者であるやましたひでこさんが、累計販売数400万部を超えるベストセラー『断捨離』シリーズの集大成として執筆したものであり、50%以上の内容を改訂した」などと、すでに多くの「断捨離ファン」が存在することを念頭に置いて書かれている。

2010年代前半といえば、日本を訪れる中国人観光客が急増し、彼らの「爆買い」が注目された時期だ。中国人はまた、自分の周囲よりも物質面で裕福であってこそメンツが立つと考える傾向が強いといった説明も多くされた。しかしそんな時代にも物質的な繁栄ばかりを追い求める行動への疑問が、中国人の心に存在していたことになる。

「断舎離 新版」の紹介文はさらに、「『断捨離』は日本発だが、その考え方の中心部分には道家哲学と共鳴する部分がある」と指摘した。道家哲学すなわち老荘思想は、物質的な繁栄を求めることや人為的に飾り立てることを強く拒絶する。その思想の原点といえる老子道徳経には「少私寡欲(自我を少なくし、欲を少なくする)」と明記されている。

経済高度成長の「狂騒」の中で見えにくくなってしまったが、中国人の心の中には多くを所有することに対する否定的あるいは懐疑的な感覚が流れ続けていたと考えられる。だからこそ、日本発の「断捨離」の主張に強く共鳴する人が続出したと言えるだろう。

また、中国では「断捨離」生活を実践した人が、その状況をSNSを通じて紹介することで、追随する人がさらに増える現象もあった。もともと多くの中国人の心の中にあった「寡欲な生活へのあこがれ」が、SNSという現代的な情報伝達の手段によって、より大きく増幅する状況があったと考えられる。(翻訳・編集/如月隼人

※記事中の中国をはじめとする海外メディアの報道部分、およびネットユーザーの投稿部分は、各現地メディアあるいは投稿者個人の見解であり、RecordChinaの立場を代表するものではありません。

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