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9日、中国新聞週刊は中国の大規模AI言語モデルのディープシークについて「DeepSeekによる診察は信頼できるのか?」と題した記事を掲載した。写真はディープシーク。
2025年3月9日、中国メディアの中国新聞週刊は、中国の大規模AI言語モデルのDeepSeek(ディープシーク)について「DeepSeekによる診察は信頼できるのか?」と題した記事を掲載した。
記事は、近ごろSNSでは医師がさまざまな診療科のさまざまな程度の検査報告書をディープシークに見せて評価させた結果に関する投稿がよく見られ、多くの医師がその能力を認めていると紹介。中にはディープシークの結果を持って医師に処方箋を求める人も現れ始め、「医師は失業間近」といった議論さえ引き起こしていると伝えた。
また、公立病院もAI技術の成熟度や投資対効果などに関する従来の多くの懸念を一掃し、ディープシークを積極的に受け入れ始めており、この1カ月余りで中国の20以上の省(直轄市・自治区)の100カ所がディープシークのローカル展開を完了したとの統計もあるとし、先日行われた全国人民代表大会と中国人民政治協商会議(両会)でも医療データ分析、臨床診療の支援、慢性疾患モニタリング、遠隔医療など医療分野におけるAIの実用化の可能性が肯定的に評価されたと紹介した。
記事はその上で「水を差すようだが、現時点ではディープシークは医師を代替できない」と指摘。医師が一目で除外できるはずの一部疾患をディープシークが見逃すなど、専門的な経験の欠如による能力不足の存在や、引用された論文の出典をさかのぼることができない、絶対に併用すべきではない組み合わせの薬を処方するといった状況の発生も医師から報告されていることを伝えた。さらに、患者がディープシークに正確な情報を伝えられるのかという疑問も存在するとした。
そして「実際、ディープシークが臨床での実用化に必要なレベルに達していないことは、多くの業界専門家の共通認識でもある」とし、全国政協委員であり、首都医科大学全科医学・継続教育学院の呉浩(ウー・ハオ)院長が「人工知能(AI)は医療従事者を完全に代替することはできず、人々をサポートすることができると言うべきだ」と述べたことを紹介。実際に臨床現場でディープシークを活用するためには医師の臨床経験を大量に組み合わせて訓練する必要があるという、首都医科大学附属北京朝陽医院呼吸器・重症医学科―北京市呼吸器疾患研究所呼吸睡眠センターの主任医師である林俊嶺(リン・ジュンリン)氏の見解を伝えた。
記事は一方で、ディープシークなどのAIモデルが医師の代替こそ不可能なものの、医療現場で大きな役割を果たし得ることは否定できないとし、医師の時間と労力を解放し、専門的な価値をさらに高め、それによって医療資源の不足などの業界固有の問題をある程度緩和できる可能性があると指摘。その事例として、上海交通大学医学院附属瑞金医院と華為技術(ファーウェイ)が共同開発した病理切片中の病変領域識別システムにより従来医師が数分かけて実施していた識別をAIが秒単位で完了できるようになったことなどを挙げた。
さらに「地方の医療機関にとって、より低コストなディープシークは、サービス能力の向上をもたらす可能性もある」とし、若手医師の診断補助やカルテ作成、大衆向けの健康啓発支援などさまざまな応用先があることを伝えた。
記事は最後に、医療分野におけるAIの実用化に当たってはまだまだ解決すべき問題がたくさんあり、大型モデルが持つハルシネーション(幻覚)問題は患者の生命を脅かす存在になる可能性があるなど、実用化に向けてはより細分化された高度なトレーニングが必要になると指摘。患者のプライバシーや倫理的な問題、医師や患者とのコミュニケーションといった問題もあり、今後も「できるところから少しずつやっていき、経験の中でさらに応用を深める」といったプロセスが欠かせず、AIを導入する病院としては費用対効果の検証も必要になるとの見方を示した。(編集・翻訳/川尻)
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