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日本を訪れる中国人の数は「コロナ前」に迫る勢いだ。しかしかつてのように「爆買い現象」を耳にすることはない。なぜなのだろう。
日本政府観光局によると、2024年通年の中国人(大陸部)の訪日者数は前年比187.9%増の698万人だった。19年の959万人にはまだ及ばないが、増加率の大きさからして、このまま推移すれば中国人の日本観光の「完全復調」も遠いことではないはずだ。しかし、かつてのように「中国人による爆買い現象」を耳にすることはない。なぜなのだろう。本稿では、上海に拠点を置いて市場分析や総合コンサルティングを営む上海嘉世営銷諮詢有限公司(MCR)による「中国人日本訪問観光市場簡易リポート」を元に、中国人の日本観光についての状況をご紹介する。
2024年における中国人の海外旅行で、日本に行った人は698万人、フランスは670万人、韓国は308万人だった。日本人は中国人にとって、最も人気のある海外旅行先だった。日本に観光旅行に行った人を年代別にみると30代が30%で最も多かった。若年層では10代が6%、20代が23%だった。逆にシニア層では40代が19%、50代が11%、60代が5%だった。
日本を旅行した人が過去最多だった19年にはすでに自由旅行の人気が高まり、日本を旅行した人のうち団体旅行をした人は32%で、自由旅行をした人は68%だった。24年にはこの傾向がさらに進行し、団体旅行をした人は4%、自由旅行は96%に達した。
MCRによると、新型コロナウイルス感染症の影響が薄らぐと、中国人観光客はまず、東京、大阪、京都などの従来からの旅先につめかけた。しかし観光客の過多で、「旅の質」が低下する現象が発生した。日本を旅する中国人の間ではその結果、自分なりに新たな旅先を見出して、満足いく日本旅行を実現しようとする傾向が強まった、24年に人気が出た旅先としては、神奈川県、高松市、九州北部、和歌山県、愛知県名古屋市、北海道などがあるという。
日本旅行に伴う航空運賃以外の出費の内訳としては、19年には21.2%だった宿泊費が24年には30.0%に上昇した。文化娯楽費は同じく3%から8%に増えた。率としてはまだそれほど大きくないが、3倍近くにまで増えて1割に近づいたことになる。飲食費は17.2%から19.6%、日本国内の移動費は7%から8%へと、それぞれ微増した。
目立ったのが物品購入費で、19年には51%で日本での旅行費用の過半を占めていたが、24年には34%にまで減少した。MCRは、中国人客の日本旅行での金銭の用途の変化について、中国で「80後」「90後」と呼ばれる世代の人が、日本を旅行する人の主流になったことが関係すると分析した。「80後」「90後」とはそれぞれ1980年代生まれ、1990年代生まれの人を指す。この世代の人々は、幼い頃にも「国が貧しくて良品の入手が難しい中国」はほとんど体験していない。そのため、「よいと思える商品だったらとにかく入手したい」という衝動は少なく、逆に「自分にとって何が楽しくて何が有益か」をしっかり考える傾向が強いとされる。
MCRは、日本を訪れる中国人客の求めるものの変化について、かつての「物品を求める」気持ちの強さから、「精神的な体験」や「文化的な体験」に移行しつつあると指摘した。彼らが求めるものは「日本にしかない商品」ではなく、「日本でしか体験できない文化」になってきており、さらに自分の旅の様子をソーシャルメディアで共有することにも価値を見出している。さらに、ソーシャルメディアを利用するなどで、「よりニッチな旅行ルート」を見出そうという意識が旺盛で、そのために、行き先がさまざまな地方に分散する現象が発生しているという。(翻訳・編集/如月隼人)
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