中国で盛り上がる「反内巻」とは? 「無意味な努力」からの脱却を期す―香港メディア

Record China    2025年4月7日(月) 10時0分

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香港メディアの香港01は2日、「2025年は中国の『反内巻』元年?若者が逃れたいのは『見せかけの努力』」と題する記事を掲載した。

香港メディアの香港01は2日、「2025年は中国の『反内巻』元年?若者が逃れたいのは『見せかけの努力』」と題する記事を掲載した。

「内巻」とは中国でインターネットスラングとして生まれた言葉で、「不条理な内部競争」「無意味な競争」といった意味を持つ。記事によると、当初、この言葉にはネガティブな意味はなかったが、時が経つにつれて単なる「努力」ではなく、ハムスターが車輪を回すように、無駄だと分かっていながらやらざるを得ない現実世界の苦境を表現するようになっていったという。

記事は、「SNSで『996』(朝9時から夜9時まで、週6日勤務)と言われる過酷な労働状況に注目が集まり、資本家に対する批判の声も高まった。そうした背景の下、『内巻』は次第に企業が一般社員を搾取することを指すようになった。『内巻』は自ら望んで選ぶものではなく、過度に乱用された企業文化・制度によって生まれた受動的な競争であるという認識である」と説明した。

一方で、「企業だけがこの論争の悪役なのか」と疑問を呈し、ネット上では「上司が帰らないと自分も帰れない」「日報、週報、月報を数ページ多く書けば仕事を頑張っているように見える」との声が出ていることを紹介。原因は企業の上層部だけにあるのではなく、職場における自主的な残業や、競争の中で誰よりも先に立ち止まる勇気を持てないなど、個人にもその責任があるという意見もあることを伝えた。

記事によると、浙江省の「青年養老院(激しい競争に疲れた若者が一時的に仕事を離れ、心身をリフレッシュするための施設)」にはかつて大手企業で働いた人らがいて、新しいプロジェクトについて熱い議論を交わしていた。入居者は「私たちは本当に隠居したいわけではない。そもそも完全に働かないことは不可能。ただ、仕事をしながら生活も楽しむ権利が欲しいだけ」と語ったという。彼らは競争そのものを否定しているのではなく、無意味に消耗させる「空転する競争」に反対しているといい、「あれこれやっても結局何も残らない」という疲弊感から逃れたかったのだという。

若者の間で「反内巻」の意識が高まるにつれ、国も動き始めた。昨年12月の中央経済工作会議で「内巻式競争の是正」が打ち出され、2025年の政府工作報告でも再び強調された。DJI(大疆)、ハイアール(海尔)といった企業が相次いで「反内巻」施策を発表し、残業の厳格な制限、無駄な残業の禁止、完全週休二日制の実施などを導入した。記事は「こうした動きは中国の企業が『疲弊するのは美徳』とする時代に終止符を打とうとしていることを表している」と評した。

ただ、労働者の間には疑念も存在する。ネット上には「結局、オンライン残業に代わるだけでは?」「強制退勤後も、チャットで業務連絡が続くのでは?」「企業は一時的な勢いで改革を進めているだけでは?」といった声もあるという。こうした懸念は決して杞憂(きゆう)ではないといい、ある調査では24年に有給休暇を消化し切れなかった人は半数を超え、その理由は「仕事が忙しすぎるから」(31.5%)、「会社から許可が出なかったから」(25.3%)が多かったという。

浙江大学管理学院の王小毅(ワン・シャオイー)教授は中国メディアのインタビューで「反内巻は単なる管理制度の修正ではなく、"効率至上主義" から "人間の価値を重視する社会" へのパラダイムシフトでなければならない」と指摘。記事は「もし改革が表面的なものに終わり、『タイムカードの代わりにアプリで勤務時間を監視する』『出勤記録の代わりに遠隔監視を導入する』という形に変わるだけなら、それは単なる焼き直しにすぎない」と訴えた。

記事は一方で、競争が社会に価値をもたらす場合もあるとし、「例えば小米(シャオミ)は技術革新を通じて低価格で高品質な製品を生み出し、市場競争を激化させながらも消費者と産業界に利益をもたらした。これは『良性の内巻』である」とした。しかし、「ミルクティー業界は価格競争のために原材料の質を落とし、サービスの低下を招いた結果、消費者の信頼を失い、市場全体が悪化する事態に陥ったが、これは単なる消耗戦にすぎず、成長にはつながらない」と論じた。

そして、「問題は競争そのものではなく、その方向性と結果にある。単なる長時間労働や、見た目だけのパフォーマンスは競争の本質をゆがめ、社会を疲弊させる」と指摘。「2025年は『反内巻』元年だが、終点ではなく、若者たちが本当にやるべきことは何かを学び直す分岐点となるかもしれない」とし、「私たちが本当に排除すべきは競争そのものではなく、無意味な努力だ。『反内巻』の流れが続けば、将来的に私たちは『どうすればもっとやれるか?』ではなく、『この仕事は本当にやる価値があるのか?』と問い直す社会を築けるかもしれない」と結んだ。(翻訳・編集/北田

※記事中の中国をはじめとする海外メディアの報道部分、およびネットユーザーの投稿部分は、各現地メディアあるいは投稿者個人の見解であり、RecordChinaの立場を代表するものではありません。

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