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中国メディアの大風新聞は、家族が亡くなった直後に葬儀業者が詰め掛ける状況を問題視する記事を発表した。個人情報が洩れている可能性が濃厚で、動転している遺族に法外な料金を要求する場合もあるという。
4月4日は二十四節気の中の清明節だった。中国では清明節に先祖の墓参りをする習慣があり、報道でも墓参り関連や、その他の葬儀や墓地に関する話題が多くなる。中国メディアの大風新聞は、家族が亡くなった直後に葬儀業者が詰め掛ける状況を問題視する記事を発表した。個人情報が洩れている可能性が濃厚で、家族を失って正常な判断が難しくなっている遺族に法外な料金を要求する場合もあるからだ。また、病院では複数の葬儀業者が詰め掛けて、「客の取り合い」で乱闘になった事例もあるという。
遼寧省瀋陽市在住で、現在は48歳の張さんは、2年前の出来事について「この件は今でも心の中でどうしても整理がつかない」と語った。2023年当時、張さんの88歳の祖父は寝たきりの状態で、両親の負担を軽減するために張さんが自宅で祖父の世話をしていた。23年4月17日午後9時ごろ、祖父の容態が急変したので、張さんは救急隊の出動を要請した。しかし手当ての甲斐なく、祖父は自宅で他界した。
医療隊が引き上げた。張さんは祖父の死亡確認書を見て呆然として、祖父の死を両親に知らせねばならないなあと考えていた。ところがすぐに、携帯電話に葬儀業者から連絡が入り始めた。それも4、5社から立て続けだった。張さんは葬儀業者からの電話を立てつづけに切り、ようやく両親に連絡することができた。
張さんはさらに、祖父の死を届けるために警察署に向かった。自宅に戻ると、そこにいたのは駆けつけた両親だけではなかった。玄関前には多くの人がいて、それぞれ自分は葬儀業者の者だと言い、葬儀のプランを売り込んだ。押しかけた葬儀業者は計3社だった。部屋に入ると見知らぬ男性2人が祖父の遺体の処理をしていた。張さんは両親が呼んだ人と思ったが、両親は張さんが呼んだ人だと思っていた。要するに遺族の求めには関係なく「自分のビジネス」を進めるやり方で、張さんは極めて不快に思った。だが張さんの両親は、「もう手伝ってもらっているのだから」という理由で、その業者に葬儀を扱ってもらうことにした。
張さんの両親は業者に手付金を支払っていた。張さんはその金額について覚えていないが、記録によると、翌日に残金3800元(約7万7000円)を送金した。張さんはその後、葬儀業者に、どうして祖父の死を知ったのかを尋ねたが、何度尋ねても回答は得られなかった。
張さんによると、3年前には農村部で祖母の葬儀を手配したが、同様の状況は発生しなかった。祖父が死去した際に多く葬儀業者が同時に現れたことについて、救急センターと葬儀業者の間に何か裏取引があるのではないかと疑問を抱かざるを得なかったという。
中国メディアの華商報がこのほど、瀋陽市救急センターに問い合わせたところ、センター職員は「救急業務の流れは厳密に管理されており、患者情報の漏洩は厳禁されています」と述べ、救急センター内部で不正があったことを否定した。
しかし、これまでの報道などによると、中国では葬儀を巡る不正がしばしば発生している。これまでに、安徽省合肥市内では一部葬儀業者が病院職員を買収して故人の情報を得た上で、事前に家を訪問して顧客を獲得していたとの報道があった。16年には、上海の一部民間葬儀機関が故人の情報を購入し、地元政府の民政部門を装って売り込みをしていた。同年12月には、遼寧省大連で多くの葬儀業者が病院ロビーで「顧客の取り合い」で乱闘となり、警察に拘留された事件も報じられている。
張さんは「私は祖父に育てられたのです」と語った。その祖父が他界して悲しみに打ちひしがれている最中に、売り込みに来る葬儀関連業者は「遺族の気持ちを少しも考えていない」と思ったという。
大手法律事務所である北京徳恒法律事務所の陝西省西咸新区支部に所属する李宝坤弁護士は、近年の類似事例を分析し、「もし救急関係者や医療機関が故人の情報を漏洩していたことが判明すれば、多くの法により責任が問われる可能性があります」と指摘した。ある病院の情報漏洩事件では、情報を売った看護師が公民個人情報侵害罪で処罰され、病院も管理不備により衛生健康当局から行政処分を受けたという。
李弁護士によれば、「故人の遺族には知る権利やプライバシー権は法律で保障されています。葬儀業者の中には、情報を入手した後に高額なサービスを強引に売り込んだ事例もあり、これは強制取引に該当する可能性があります」と指摘した。李弁護士は、同様の事態に直面した場合には、まず現場の様子を写真や動画で記録し証拠を残すこと、次に衛生健康委員会および民政部門に同時に通報すること、さらに市場価格を著しく上回る料金については返金を主張することを勧めた。
著名な弁護士である河南沢槿法律事務所の付建所長は、湖北省武漢市での事例として、顧客争奪による精神的損害に対し、葬儀業者に賠償を命じる判決が言い渡されたことがあるとと紹介した。情報漏洩の出所を最終的に特定できなくても、遺族は「民法典」に基づいて、葬儀業者の不当な行為が人格的尊厳を侵害したとして、謝罪や賠償を求めることができるという。(翻訳・編集/如月隼人)
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