トランプ対中関税、「省別打撃度」で見えてくる中国の産業分布構造―華字メディア

Record China    2025年4月13日(日) 22時0分

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トランプ米政権が打ち出した、対中関税政策では、中国側の省別の「打撃度」は大きく異なる。そのことから中国の産業分布の構造が見えてくる。写真は米国向けの日曜雑貨類が多い浙江省の義烏で撮影。

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海外在住中国人向けに中国語記事を紹介するウェブサイトの留園網は11日、トランプ米政権が打ち出した、中国産商品の輸入に100%以上の関税を課す措置についての、省別の「打撃度」を示す記事を掲載した。この「打撃度」からは、中国の産業分布の構造が見えてくる。

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記事はまず、省(含む中央直轄市、民族自治区)別の「経済対米依存度」を、GDOに占める対米輸出額の割合の一覧で示した。上位には浙江省の7.14%、広東省の6.83%、上海市の5.24%、江蘇省の4.39%、福建省の4.09%などが並んだ。

北京市は0.84%で、同じく大都市である上海市よりも対米依存度が極めて低い。また、全体として東部沿海地区の対米依存度が高かったが、海港がある河北省の0.82%、遼寧省の1.00%を比べて、内陸部の重慶市の2.25%、四川省の1.92%、河南省の1.86%、安徽省の1.52%の方が、対米依存度が高いことが分かる。

「海沿いの地域ほど対米依存度が高い」が単純には成立していない理由には、地域による産業および貿易構造の違いがある。例えば広東省は近隣の香港、マカオ、東南との貿易が盛んだ、江蘇省と山東省は日本や韓国に近い。それに比べて浙江省では米国とのビジネスが好まれ、米国も浙江産の商品を好んで使ってきた。代表例としては、同省の義烏から出荷される日用雑貨類がある。

浙江省義烏市

北京と上海については、いずれも国際化が進み大いに繁栄する大都市だが、両者の産業構造には大きな違いがある。まず、上海の工業規模は北京よりはるかに大きく、輸出可能な製品も多い。さらに上海は長江の河口に位置するので、長江流域全体の貨物が上海に集まり輸出される。そのため、上海からの輸出は北京よりもはるかに活発だ

また、重慶、四川、河南には海港がないが、比較的整備された国際物流体系が構築されており、航空便、道路輸送、鉄道、水運などを利用して米国に輸出される商品も多い。これらの内陸部では米国向け商品が大量に製造されてきた。

例えば、重慶は世界有数のノート型パソコンの製造拠点であり、米国のパソコン関連大手のヒューレット・パッカード(HP)の委託生産をする工場も多い。四川省成都は世界最大のタブレットパソコン生産基地であり、米国人が使用するiPadの大半は成都で生産されている。また、河南省鄭州市には、アップルにとって最大のサプライヤーである鴻海精密工業(ホンハイ、フォックスコン)が製造拠点を置いている。

2020年に新型コロナウイルス感染症が勃発した際には、重慶、四川、河南にあるアップルの委託工場が一時的に操業停止になったために、米国国内の多くのアップル小売店が営業停止に追い込まれたことは記憶に新しい。

重慶

中国国内からは悲観的な声も聞こえてくる。深センのある貿易会社の社長は、米国との「関税報復合戦」のせいで、さらにコンテナ3個分の取り引きが吹き飛んだと説明し「数十人を抱えるわが会社を食わせていけるかどうかも、もはや不確実です」と述べた。寧波市越境EC協会の謝尚偉秘書長は「こんなに高い関税では、もはや商売は成り立ちません」と述べた。多くの企業は対策を打ち出せず米中の「関税報復合戦」の成り行きを見守るしかない状態という。

中国大陸部出身で、香港やシンガポールの名門大学の教授職などを歴任してきた経済学者の鄭永年氏は、今後について「関税率が500%に達しても同じことです」と説明した。関税率が60%〜70%に達したら商売はすでに成立しないからという。つまり、米国による中国デカップリングが実施されたことになる。

中国の各地当局が手をこまねいているわけではない。江蘇省政府は9日に常務会議を開き、多元的な輸出の開拓や企業コストの引き下げをさらに推進し、「一業種一対策」「一企業一対策」により打撃を受けた業種や企業を支援し、全力で難関を突破すると強調した。

江蘇省南京市

上海市商務委員会は11日、「上海市企業の海外進出総合サービスプラットフォーム」を統括して構築すると表明した。特に専門性が強かったり、独自の技術や新機軸の強みがある企業の海外進出を支援するという。

米国のトランプ第1期政権が「対中貿易戦争」を本格化したのは2017年だった。「貿易戦争」はバイデン政権でも続き、政権に返り咲いたトランプ大統領が改めて「第二次対中貿易戦争」を仕掛けるまで約7年間続いた。しかし中国の「貿易大省」はその期間中にかえって力をつけてきた。国全体の輸出総額は何度も新記録を打ち立て、GDPも年々成長しつづけた。浙江省で「杭州六小竜」と呼ばれる阿里巴巴(アリババ)、螞蟻集団(アントグループ)網易(ネットイーズ)、海康威視(ハイクビジョン)、大華(ダーファ)、杭叉集団はシリコンバレーも一目置く存在になった。

現在の「米中貿易戦争」は中国側にとってこれまで以上に厳しい様相を示しているが、中国側も対策を次々に打ち出している。中国側が厳しい環境をばねに、競争力をさらに強化する可能性は否定できない。(翻訳・編集/如月隼人

※記事中の中国をはじめとする海外メディアの報道部分、およびネットユーザーの投稿部分は、各現地メディアあるいは投稿者個人の見解であり、RecordChinaの立場を代表するものではありません。

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