宇多田ヒカルの「道」、人生初の日本語の歌―中国人学生

日本僑報社    2025年4月20日(日) 15時0分

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高校生の時、申し訳ない話だが、クラスメイトたちを見ながら我知らず、「先生になったら、毎日こんな困り者たちと向き合わなければならないのか」と感じていた。

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大学に入るまで日本語を全くしゃべれなかった私が、日本語を専攻するようになるとは、正直に言って夢にも思わなかった。だが、今ではこのような作文を書けるようになった自分を誇りに思う。とはいえ、今日は自画自賛ではなく、私の心の奥底に埋もれている本音を吐きたい。

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高校生の時、申し訳ない話だが、クラスメイトたちを見ながら我知らず、「先生になったら、毎日こんな困り者たちと向き合わなければならないのか」と感じていた。そこで将来に教育職だけは避けようとしていた。

それなのに大学に入ってから、そんな考えは180度変わった。自分の関心事に没頭し、執拗な追究で知識の限界を突破するということが、何だかロマンチックに感じられたのだ。講壇に立って情熱を燃やす先生方の姿を見ながら、いつの間にか言語学の分野で研究を行う教師になりたいという夢を抱くようになった。

私は度々、日本語学科の教員紹介サイトを盗み見る。「内偵」というわけではなく、「どうすれば先生方のようになれるか」「私も先生方のような人になれるか」という一種の期待感なのだ。そして、それ以上の願望を持って、自分のキャリアを計画してみる。

そんなある日、いつものようにサイトをクリックしたら、驚いたことに新たに入職される先生のプロフィールがアップデートされていた。学科の先輩で、先日、日本で博士号を取得して母校へ戻って来られるということ。私もそうなれるか、私ならできるか。

昨年、生意気な試みで論文コンクールに応募した。自分なりに日本語の「テミル」構文に興味があって、その中国語訳の問題について論文に書いてみたが、残念ながら結果は火を見るよりも明らかだった。しかしながら、先生のご指導の下、多くのことを学べた掛け替えのない機会だった。いくども書き直すうちに、再び教師という職業の魅力に惹かれ、先生に比べて私はまだ極めて小さな苗木だということが分かった。授業でしっかり頑張っているといっても、やはり学ぶべきことがまだまだ山ほどあるということを改めて感じた。

私は中国生まれだが朝鮮族なので、日中韓三ヶ国語いずれも学ぶことができた。将来的には自分のこのような点を生かして、言語学をめぐる研究を行いたいと思っている。

けれども何だか、将来を期待していながらも、いつも漠然とした不安を抱えている。頑張っている自分自身を見ても、「これで、果たして正しいのか」と不安に思う。そんな時はふと、1年生の時に先生がおっしゃった話を思い出す。

「私は高校を卒業した後、すぐ大学に進学したわけじゃない。一度きりの選択が後半生を決めるかもしれないのに、どうしてそんな若いうちに決定を下さなければならないのかしら。それで私は、まず勤め口を得た後、日本語教師になりたいということに気づいて、博士まで勉強して今に至ったの」

20歳を目前に控えた今、ようやく未熟さから徐々に抜け出しているような気がする。つまり、人生に関することを深思熟考するには今までの自分では幼すぎたのだろう。だがそうであっても、道を歩いていけば、自ずと答えが見つかるはずだ。道を選ぶ勇気よりも、歩いていく勇気を大切にしたい。

「一人で歩いたつもりの道でも、始まりはあなただった」。宇多田ヒカルの『道』という歌だ。日本語を学び始める前、ローマ字を読みながら聴いた人生初の日本語の歌だった。今、私は慶應義塾大学で交換留学生として勉強している。偶然にも慶應の先生方は、担任の先生が留学していたときの恩師だった。私の歩いている道。その始まりは未熟だったが、先輩たちの足跡を辿りながら私は歩いている。また誰かが歩いてくるだろう。繋がり、重なっている道で、私は夢を追っている。

■原題:道

■執筆者:池翰林(中国人民大学

※本文は、第20回中国人の日本語作文コンクール受賞作品集「AI時代の日中交流」(段躍中編、日本僑報社、2024年)より転載・編集したものです。文中の表現は基本的に原文のまま記載しています。なお、作文は日本僑報社の許可を得て掲載しています。

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