<大学の国際化(上)>アジアトップ10に日本は2校だけ―政府が危機感、重点支援「スーパーグローバル大学」選定

八牧浩行    2014年12月16日(火) 5時5分

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文部科学省は大学の国際化に向けて重点支援する「スーパーグローバル大学」37校を選定した。世界大学ランキングで100位以内を目指す「トップ型」に東大、京大など13校、国際化を牽引する「グローバル化牽引型」に金沢大や立命館大など24校を選んだ。写真は東大。

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文部科学省は大学の国際化に向けて重点支援する「スーパーグローバル大学」37校を選定した。世界の大学ランキングで100位以内を目指す「トップ型」に東京大、京都大、筑波大など13校、日本の国際競争力向上に貢献する「グローバル化牽引型」に金沢大や立命館大など24校を選んだ。

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支援対象の大学が今後10年かけて取り組む事業構想も公表。日本の大学の国際競争力の低下に対する政府や学術界、経済界の危機感が高まっていることが背景。構想がどこまで実現され、機能するか注目されている。

スーパーグローバル大学は13年5月に政府の教育再生実行会議が提言したのを受けたもの。「トップ型」には年間4億2千万円、「グローバル化牽引型」には同1億7千万円の手厚い財政支援を10年続ける。

◆「トップ型」世界ベスト100に10大学を

「トップ型」に選ばれたのは以下の13校で、東京大をはじめ日本を代表する研究大学が並び、具体的な構想も打ち出された。北海道大、東北大、筑波大、東京大、東京医科歯科大、東京工業大、名古屋大、京都大、大阪大、広島大、九州大、慶応大、早稲田大―。東大は「世界トップレベルの研究型総合大」を目標に掲げ、海外大学との共同研究や、英語で取得する学位の拡充などを打ち出した。京大は世界ランキング10位を目標に、世界をリードする研究者の任用増などを挙げた。

政府は「世界ランキング100位以内に10大学」を目標に掲げ、「トップ型」支援で達成を目指すが容易ではない。現在、世界的に権威のある「QS World University Rankings 2014-15」によると100以内に入っているのは前年と同じく東大と京大の2大学だけで、しかも京大は前年の52位から59位に順位を落とした。東大は前年と同順位の23位でアジアトップの座を維持したが、米欧のトップ大学の背中は遠い。教育や研究に対する評価は高いものの留学生数などの国際化指標が低いという課題は解消されていない。

このほか、200位以内に入っているのは東工大(141位)、阪大(157位)、東北大(165位)の3大学。以下、名古屋大が226〜250位レベル、東京医科歯科大が276〜300位レベル、筑波大が301〜350位レベル、北大・九大・早大が351〜400位レベルにとどまっている。このランキングは、世界3000以上の大学を調査、うち合計800大学の評価をまとめたもので、上位400大学について個別順位、総合評価に加え、分野別や評価基準別の順位などを掲載している。

 

総合評価では米国のマサチューセッツ工科大学が3年連続1位に選出。米国はベスト10に6大学、ベスト100にも28大学をランクインさせ、米国大学教育優位を印象づけている。

アジア勢の追い上げも著しい。英タイムズ誌の今年のアジア大学ランキングは、1位の東大を筆頭に日本から地域最多の20校が100位入りしたが、中国は18校、韓国は14校と迫っている。トップ10は(1)東京大(2)シンガポール国立大学(3)香港大学(4)ソウル大学(5)北京大学(6)清華大学(7)京都大学(8)韓国科学技術院(9)香港科技大学(10)浦項工科大学校―の順。日本勢は東大、京大の2校だけだった。

◆「牽引型」に特色のある大学、閉鎖性打破狙う

日本の国際競争力向上に貢献する「グローバル化牽引型」に選ばれたのは以下の24大学。千葉大、東京外大、東京芸大、長岡技術科学大、金沢大、豊橋技術科学大、京都工芸繊維大、奈良先端科学技術大学院大、岡山大、熊本大、国際教養大、会津大、国際基督教大、芝浦工大、上智大、東洋大、法政大、明治大、立教大、創価大、国際大、立命館大、関西学院大、立命館アジア太平洋大 ―。「牽引型」では、外国人教師や留学生の増員、海外の大学との提携など、大規模大、小規模大を問わず、大学の個性を生かした国際化を促し、他の多くの大学が手本にしやすい取り組みを増やす。(八牧浩行

『<大学の国際化(下)>有力大「MARCH」「関関同立」内で明暗―「ランキング至上主義」に弊害も』に続く。

■筆者プロフィール:八牧浩行

1971年時事通信社入社。 編集局経済部記者、ロンドン特派員、経済部長、常務取締役編集局長等を歴任。この間、財界、大蔵省、日銀キャップを務めたほか、欧州、米国、アフリカ、中東、アジア諸国を取材。英国・サッチャー首相、中国・李鵬首相をはじめ多くの首脳と会見。東京都日中友好協会特任顧問。時事総合研究所客員研究員。著・共著に「中国危機ー巨大化するチャイナリスクに備えよ」「寡占支配」「外国為替ハンドブック」など。趣味はマラソン(フルマラソン12回完走=東京マラソン4回)、ヴァイオリン演奏。

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