如月隼人 2017年3月21日(火) 15時40分
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中国が北朝鮮問題に対する危機感を強めている。そのあらわれのひとつが、国内での情報統制だ。写真は朝鮮半島関連の地図。
訪中した米国務長官と自国の外相で朝鮮半島において「かなり危険なレベル」との認識で一致したとすれば中国国内、特にインターネットでは北朝鮮批判が改めて激化し、さらには自国外交が失敗したなどと共産党や政府に対する批判が高まる恐れもある。中国当局としては避けねばならない事態だ。
しかし中国当局が同問題に対して極めて強い危機感を持つに至ったことには変わりない。王毅外相は20日、中国発展高層論壇(発展ハイレベル・フォーラム)の年会に出席し、朝鮮半島情勢について「最近になりヒートアップが再び激化している」と指摘。今後の事態として2つが考えられるとして「1つは対抗がエスカレートしつづけ、最終的に衝突、場合によっては戦乱に至る。もう1つは双方が冷静さを取り戻し、ともに半島の核問題を政治外交で解決する軌道に戻す」と述べた。
中国政府首脳が「朝鮮半島」の地域を限定して戦争の可能性に言及するのは異例だ。王外相は続けて、米韓が13日に開始した大規模な軍事演習の「キー・リゾルブ」を停止し、北朝鮮側の核開発を暫定的に停止する「双軌並行(複線並行)」を改めて主張。順序としては米韓側がまず演習を停止し、対話への道筋をつけるべきだと論じた。
王外相の主張は、現状では北朝鮮に核開発やミサイル発射をやめさせるのは不可能との認識を示したと理解できる。「米トランプ政権の方が、まだしも大人」との考え方を示したとも言える。
ここで気になるのが、王外相の発言も中国国内において「自国外交の失敗」との批判を高めかねないことだ。ただし、米国務長官との共同記者会見の場で双方が「危険なレベル」との認識で一致したとの情報に比べれば、インパクトはやや弱くなる。
また、18日の共同記者会見と20日の王外相発言の曜日も関係している可能性がある。中国外交部は月曜日から金曜日の平日にはおおむね定例記者会見を行っているが週末には休む。共同記者会見は土曜日だったので、当局側が定例記者会見を利用して、「米中双方が朝鮮半島情勢は危険なレベルと認識」とのティラーソン発言の衝撃を緩和することはできない。
王外相の発言は月曜日だった。その日の記者会見では同発言についての質問があったが、外交部の公式サイトでは質問部分も回答部分も「戦乱」の語を使っていない。今後の記者会見で王外相による「戦乱」発言の真意に対する質問が出る可能性はあるが、記者会見に臨む外交部報道官は同発言のインパクトを弱める姿勢に徹するはずだ。(3月21日寄稿)
■筆者プロフィール:如月隼人
1958年生まれ、東京出身。東京大学教養学部基礎科学科卒。日本では数学とその他の科学分野を勉強し、その後は北京に留学して民族音楽理論を専攻。日本に戻ってからは食べるために編集記者を稼業とするようになり、ついのめりこむ。毎日せっせとインターネットで記事を発表する。「中国の空気」を読者の皆様に感じていただきたいとの想いで、「爆発」、「それっ」などのシリーズ記事を執筆。中国については嫌悪でも惑溺でもなく、「言いたいことを言っておくのが自分にとっても相手にとっても結局は得」が信条。硬軟取り混ぜて幅広く情報を発信。 Facebookはこちら ※フォローの際はメッセージ付きでお願いいたします。 ブログはこちら
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