如月隼人 2017年5月20日(土) 9時50分
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中国がベトナムやフィリピンとの関係を急速に回復させている。中国は蔡英文政権下の台湾に圧力をかけることを、目下のところ最優先課題と認識していると言ってよい。資料写真。
特に2014年ごろからは、中国が自ら実効支配する岩礁で大規模な埋め立て工事を行い人工島を築いたなどで、中国―ベトナム、そして中国―フィリピンの対立は激化した。ベトナムでの死傷者を伴う反中暴動やフィリピンのオランダ・ハーグの仲裁裁判所への提訴、さらに米海軍の南シナ海での航行など緊張を高める事態が連続して起こった。
変化のきっかけは16年6月のフィリピン・ドゥテルテ政権の発足だった。同大統領は前任のアキノ大統領とは方針を一転させ、中国に対して歩み寄る姿勢を見せた。しかしドゥテルテ大統領の発言に大きな「ブレ」があることなどで両国の接近は一進一退した。
ところがここにきて、「一帯一路国際サミット」を機に中国とベトナム、フィリピンの関係が一気に前進した。
特に注目すべきは前述の「南シナ海行動規範」の枠組み制定の合意だろう。「南シナ海行動宣言」をランクアップして、署名国に順守を義務付ける「規範」にすることは、中国を含め関係国が早くから意向を確認しあっていた。しかし実際には主に中国が「渋った」ことで伸び伸びになっていたとされる。
とすれば、「規範」づくりの動きが顕在化したことは、中国の自国周辺に対する外交姿勢が変化したことを意味する。このことの意味は大きい。どの国の政権担当者にとっても、いったん宣言した領有権の主張などを後退させることは極めて困難だ。自国内からの強い反発を招くと考えねばならないからだ。
ベトナムやフィリピンが中国に歩み寄り始めたことから、中国が水面下で何らかの譲歩をしたことは明らかだ。中国が南シナ海における緊張を緩和させた理由は何なのか。
ここまで来て思い当たるのは台湾情勢だ。中国は16年5月20日に発足した台湾・蔡英文政権が、「一つの中国」を台湾側も認めた証拠とする「92コンセンサス」を認めていないとして、外交、経済、メディアを総動員して同政権の「締め付け」を行っている。同年12月には西アフリカのサントメ・プリンシペに台湾と断交させ自国と外交関係を樹立した。
その他、17年5月22日にスイスのジュネーブで始まる世界保健機関(WHO)の年次総会(WHA)が台湾をオブザーバーとして出席することも取りやめさせた。中国は今後も「台湾締め付け」を強化していくと考えてよい。
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