月刊中国ニュース 2017年7月1日(土) 20時10分
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前回の記事では、嫌われる日本人の上司像を描いて見せた。読んだ日本人の不安や厳しい感情をあおってしまったかもしれない。しかし、中国人部下をマネジメントするのは難しいという結論をくだすのはまだ早すぎる。資料写真。
聞き耳を立てた僕をからかった表情で見ながら、彼は教えてくれた。「答えは日本人上司に1つ質問すれば自然に出てきます。『あなたは自分の部下のそれぞれの1カ月の収入や家計がいくらか、即答できますか?』。もし正しく回答できなければ、僕らの現地幹部に比べて人気は低いはずですよ」。
「なぜならば、部下の生計はいくらか、その人の給料に合わせて計算したら、どれほど足りないかが分かってきます。上司はそれを頭に入れて常にどう給料をアップさせていくか、それなりの工夫や行動を通じて伝えていかなければならない。その真剣さこそ、部下にとって上司を評価するポイントになるのです」。
なるほど。ここまで部下の期待や要望を的確につかむのは、決して簡単なことではない。ましてや日本人にしてみれば、部下の完全なプライベート事情まで足を踏み込むのはあまりにも無理な話。自身の心理的な抵抗があって聞きづらいだろう。
「お金が部下のやる気を引き出すもっとも良い方法だと誤解しないでほしい」。と彼はすぐに付け加えた。「部下が知りたいのは、ボスがどれほど真剣に僕らのことを考えて、大切にしてくれるかどうか、その一点に尽きます。お金はそれを伝える道具に過ぎないのです」。
■上司の魅力こそ会社の最大の魅力とみなす
中国では古代から孔子の儒教の思想に基づいて、「君臣有義」という伝統的倫理観の元で上司と部下との関係を求めてきた。現代風に言えば、上司と部下は互いに慈しみの心で結ばれなくてはならない。わが身の利益を一切顧みない覚悟で相手のために尽くす。分かりやすく言えば、双方の人間関係の根幹には「忠誠心」というものが土台になるということだ。ただ「義の心」が強調されるあまり、個人に対する「忠誠心」ばかりが重視される一方で肝心な組織に対する忠誠心は、置き忘れてしまったところがある。
その伝統文化の影響を受けて、多くの中国人が組織に対してよりも上司との関わりや個人的に結ばれた絆が強くなっている。だから、中国人社員の目に映った会社とは、上司という存在に比べて二の次のものである。忠誠心を持たせる対象は、あくまでも「人」であり、「組織」ではないのだ。仮にその会社に対する「義の心」を求めるならば、やはりまず「上司」に対する忠誠心を通して繋がっていくしかないのである。
元マイクロソフト中国総裁・唐駿氏は、中国人のそのような考え方を知り尽くしているリーダーである。彼は、すべての採用者に対してかならず自ら面接をおこなうことに決めているという。その面接を通して相手を大切にし、部下との個人関係を築ける姿勢を見せようとしているからだ。
「中国人社員とアメリカ人社員との最大の違いが、一つある」と彼は語る。「アメリカ人は、雇用契約書に書かれた権限と利益を保証してくれれば、上司に対しては満足する。しかし、中国人社員はそれだけでは満足できないなのだ。彼らは、上司にかならずプラスアルファの何かを要求してくる。そのプラスアルファの中身は、例外なく上司の部下に対する人情溢れる付き合い方なのだ」。
確かにそうだ。もし「契約」を料理のメニューにたとえれば、上司の「人情」は酒のようなものである。中国人を招いた宴会では、上司の熱い心を素材にして造られた「白酒」こそ、もっとも魅力的なものであろう。(提供/月刊中国ニュース)
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浦上 早苗
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