<コラム>米国が最も警戒するミサイルを運用する中国の戦略爆撃機、初めて国外に着陸

洲良はるき    2018年7月27日(金) 23時20分

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中国の戦略爆撃機H-6Kがはじめて国外に着陸した。2018年国際軍事競技大会に参加するため、ロシア・モスクワ近くにあるリャザン州のロシア空軍基地に赴いた。写真はH-6K。

サウスチャイナ・モーニング・ポスト(2017年12月17日付)では、北朝鮮での不測の事態を警戒して、中国とロシアが対ミサイル共同演習を行ったことが伝えられている。共同演習は北京で一週間続けられた。

「中国とロシアの共同演習が、第一の対象としているのはアメリカである」と、第二砲兵工程学院(現ロケット軍工程大学)卒、元同学院教官で、フェニクス・テレビ軍事コメンテーターの宋忠平氏が言っている。「中国とロシアは共にこれらの対ミサイル共同演習を、戦略的な戦争抑止力として使いたがっている。両国は、アメリカに圧力をかけ、朝鮮半島から高高度防衛ミサイル(THAAD)を撤収させようとしたがっている」。

2017年9月には、オホーツク海とバルト海で中国とロシアが、合同軍事演習を行っている。また、同年南シナ海においても中露は海軍の統合演習をした。

今回始めて海外に着陸したと中国メディアが主張するH-6(轟-6)K爆撃機は、元はソ連のTu-16のコピー品である。1958~1959年に、中国はソ連から少数のTu-16を受け取り、ライセンス生産の合意を取り決めた。H-6の最高速度は音速には届かず、時速1055キロメートル程度だ。よく、中国のH-6爆撃機はアメリカの「超空の要塞」B-52戦略爆撃機と比較される。確かにH-6もB-52も亜音速機で、ステルス性能もない。ただし、あえて分類するならB-52は大型長距離爆撃機で、H-6は中型中距離爆撃機といえよう。H-6はB-52より航続距離は短いし、搭載できる爆弾などの量も少ない。

H-6の元となったTu-16が設計されたのは1950年代である。当時のTu-16は敵の都市や軍事施設の上空を飛び、重力で落下する爆弾を雨のように降らせようとすることを意図した爆撃機だった。けれども1970年代までには、H-6のような爆撃機は強力な防空能力のある都市や軍事施設の上空で爆弾を落とすのが難しいと考えられるようになった。そのためH-6爆撃機に遠距離から目標を攻撃できる手段が必要になった。

新型のH-6Kは大幅な性能向上がなされている。H-6Kの特徴は第一に巡航ミサイル母機として設計されていることだ。H-6KはCJ-10巡航ミサイル(射程1500キロメートル以上)やCJ-20巡航ミサイル(射程2400キロメートル以上)、YJ-12超音速対艦ミサイル(射程400キロメートル)を運用することができる。YJ-12は、現在アメリカがもっとも警戒する対艦ミサイルの一つである。YJ-12は最大でマッハ3の速度を出すことができる。YJ-12は敵の最終防衛を突破するときには、螺旋状に旋回しながら飛翔するため、迎撃が難しくなっているという。H-6Kには、新型エンジンと新しい複合素材が使われていることで、以前のH-6より能力が向上している。

かつてH-6Kより古いバージョンであるH-6D4機がイランに輸出され、1988年のイラン・イラク戦争に参加したとされている。今年の3月には、領有権争いが起こっている南シナ海の島に初めてH-6Kが着陸したことを中国国営メディア人民日報が映像付きで伝えていた。着陸したのは海南島の南東にあるパラセル諸島ウッディー島だった。

■筆者プロフィール:洲良はるき

大阪在住のアマチュア軍事研究家。翻訳家やライターとして活動する一方で、ブログやツイッターで英語・中国語の軍事関係の報道や論文・レポートなどの紹介と解説をしている。月刊『軍事研究』に最新型ステルス爆撃機「B-21レイダー」の記事を投稿。これまで主に取り扱ってきたのは最新軍用航空機関連。

■筆者プロフィール:洲良はるき

大阪在住のアマチュア軍事研究家。翻訳家やライターとして活動する一方で、ブログやツイッターで英語・中国語の軍事関係の報道や論文・レポートなどの紹介と解説をしている。月刊『軍事研究』に最新型ステルス爆撃機「B-21レイダー」の記事を投稿。これまで主に取り扱ってきたのは最新軍用航空機関連。

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