<コラム>ニュース中国語事始め=記事でよく見かける「新エネルギー車」って何?

如月隼人    2019年1月17日(木) 23時20分

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中国語の記事を読んでいると<新能源汽車>という言葉がよく出てきます。さて、いったい何を指すのか。<新>は問題ない。<汽車>が「自動車」であることをご存じいの人も多いだろう。問題は<能源>です。写真は中国の電気自動車。

横道がずいぶん長くなりましたが、中国語の<新能源汽車>は本来、「新エネルギー源車」とでも訳すべき語です。ただ、中国語では<能源>を「エネルギー」の意味で用いている場合がありますから、「新エネルギー車」としても、誤訳とまでは言えないでしょう。

ただ、ここで問題になるのが「新エネルギー車」が何を指しているかです。私は、中国関連の記事で「新エネルギー車」の語を見るたびに「いいのかなあ」と思ってしまいます。新たな概念を示す語が出てきた場合、定義などの説明なしで使ってよいか、記者はよく考える必要があります。

日本国内で登場した新語なら、「読者は理解できるだろう。この語を解説している文章も普通にあるし」と考えることもできますが、外国で発生した新語を直訳するだけで済ませてよいかどうかは別の話です。私は「基本的に解説をつけるべき」と考えます。

さて、この<新能源汽車>ですが、中国では「通常の自動車用燃料を動力源としない自動車」などと解説され、具体的には<混合動力電動汽車 hun4he2 dong4li4 dian4dong4 qi4che1>(ハイブリッド車)、<純電動汽車 chun2dian4dong4 qi4che1>(電気自動車)、<燃料電池電動汽車 ran2liao4 dian4chi2 dian4dong4 qi4che1>(燃料電池車)などと説明されてきました。

ハイブリッド車については、しばらく前まで、「特に<挿電式混合動力電動汽車 cha1dian4shi4 hun4he2 dong4li4 dian4dong4 qi4che1>(プラグインハイブリッド車)を指す」などとする説明文もよく見たのですが、その後、単に<混合動力電動汽車>とするのが一般的になりました。

なお、これらの名称は、<電動車(=純電動汽車)>、<混合動力電動車(=混合動力電動汽車)>のように、短く表現される場合もあります。

さて、この文章も本来ならば、このあたりで打ち止めにしてよかったのですが、そうもいかない事情が発生してしまいました。中国政府・国家発展改革委員会が2018年12月に<汽車産業投資管理規定>(自動車産業投資管理規則)>という文書を発表したのです。この文書はそれまでの“常識”とは異なり、ハイブリッド車を<新能源汽車>に含めず、「伝統的な燃料油を燃やす自動車」に分類しました。

私がこの文章を書いている2019年1月時点では、中国政府が今後、ハイブリッド車をどのように扱うか予断を許さない状態ですが、「従来型の自動車」に分類して、<新能源汽車>に対するさまざまな奨励策の対象にはならない可能性が濃厚になってきました。

中国政府が<新能源汽車>を重視する理由は大きくふたつがあるとされます。ひとつは環境対策で、もうひとつは自国産業の育成です。

中国で<新能源汽車>として最も重視されているのは電気自動車です。おそらくは、技術や経験の蓄積がある外国の自動車メーカーに最も対抗しやすいとの、政策面の判断があるでしょう。中国は自動車の駆動方式としては電気自動車を先行させ、同時に自国にとって“得意科目”であるIT技術を駆使した<自動駕駛技術 zi4dong4 jia4shi3 ji4shu4>(自動運転技術)を確立しようとしています。

ピンインの表記について:本コラムでは中国語を<>の中に、日本語の常用漢字の字体で表示しています。以下の部分のピンインについては、ローマ字表記の直後に声調を算用数字で添えます。軽声は0とします。 u の上に2つの点を添えるピンインには v を用います(例:東西=dong1xi0、婦女=fu4nv3)。

■筆者プロフィール:如月隼人

1958年生まれ、東京出身。東京大学教養学部基礎科学科卒。日本では数学とその他の科学分野を勉強し、その後は北京に留学して民族音楽理論を専攻。日本に戻ってからは食べるために編集記者を稼業とするようになり、ついのめりこむ。毎日せっせとインターネットで記事を発表する。「中国の空気」を読者の皆様に感じていただきたいとの想いで、「爆発」、「それっ」などのシリーズ記事を執筆。中国については嫌悪でも惑溺でもなく、「言いたいことを言っておくのが自分にとっても相手にとっても結局は得」が信条。硬軟取り混ぜて幅広く情報を発信。

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