莫邦富 2020年10月29日(木) 18時0分
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家で夕食を取る時、新型コロナウイルスが発生してからは食事をしながら7時のテレビニュースを聞く習慣を復活させた。写真はパシフィックワールド号(旧サン・プリンセス号)。
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ピースボートは、同じ1983年に設立された非営利の国際交流団体(NGO)で、主にクルーズ旅行中の船内企画やこれらの企画を支えるボランティア活動のコーディネートを担当している。クルーズ旅行の企画とその実施は株式会社ジャパングレイスに任せるという形で、珍しい二人三脚式の運営体制によって維持されているクルージングだ。
昨年までの好景気に刺激され、これまでチャーター船である客船「オーシャンドリーム号」1隻で運営してきたそのクルーズ事業は、2020年4月から同じくチャーター船である客船「ゼニス号」を新たに加え2隻体制に移ることになっていた。
2隻体制への移行は運営する客船の数的変化だけではなく、質的向上も意味している。1981年にピースボート1号船として就航したオーシャンドリーム号は、総トン数が3万5265トン、全長205メートル、乗客定員1422人で、クルーズ船としては古くて小さい方だ。昨年11月に接収したゼニス号は、本来は今年2月までに改装を終え、4月に運航に投入される予定だった。1992年にドイツの名門「マイヤー・ヴェルフト造船所」で建造された同船は、ロングクルーズのためのゆったりとした客室に加え、広々としたスパエリアや全船内にインターネット(Wi-Fi)環境を整えるなど、近代的なサービスも充実して、ピースボート2号船になる予定だった。同船は総トン数4万7413トン、全長208メートルで、ピースボート1号船より一回りも大きい。だから、乗客定員は1828人と400人も多くなる。ピースボートクルーズ史上最大の客船なので、東京五輪期間中はホテル船として活用する企画も上がったほど、運営側が大きな期待を寄せていた。
新型コロナウイルス感染の爆発に伴い、ピースボート側も他のクルーズ会社と同様に危機的な局面に直面していた。一時、資金ショートの噂も出てきて、事業の継続が危ぶまれていた。7月までは、2隻体制による倍の資金圧力を受けたピースボート側にとって、まさに泣き面に蜂という状態だった。
危機は「危険(ピンチ)」でもあると同時に、変革の「機会(チャンス)」にもなり得る。新型コロナ危機の先行きが見えない中、 大手クルーズ船企業は生き残りをかけて一生懸命、危機対応策を講じている。豪華客船の売却もその対応策の一つであろう。ピンチに苦しむ最中に、ピースボート側は、逆に業界のこうした動向に新しいチャンスを見出した。40年近くクルーズ事業を推進して相当の人脈などを培ってきた。こうした資源を駆使して、今までは絶対考えられない安い金額で豪華客船を入手しようという無謀に見えた作戦を始めた。
■ジャパングレイスが驚きの情報を公開
8月21日、東京新聞夕刊1面トップに、「世界ぐるり オンライン船旅 コロナ禍 ピースボートあす開催」という記事が大きく載った。このタイミングにこのような内容の報道と紙面レイアウトを見れば、情報世界に敏感な方ならば、おそらくすでに何かを嗅ぎ出せただろうと思った。
1カ月後の9月19日、ピースボートのホームページは更新された。ジャパングレイスが「ピースボートクルーズが生まれ変わります。パシフィック・ワールド号のチャーターについて」というタイトルで、びっくりする内容の情報を公開した。
「弊社では、かねてからのお客様の急増に対応すべく、今年4月よりオーシャンドリーム号とゼニス号との2隻体制での世界一周クルーズを計画しておりましたが、誠に残念ながら新型コロナウイルスの影響により、本年のクルーズは催行が中止となりました」
このように事情を説明したあと、「そのため、この間、新時代に対応した新たなピースボートクルーズのスタイルを再構築するため、事業計画の見直しを行ってまいりました」と言って、日本のクルーズ業界を震撼させる作戦を次のように明らかにした。
「このたび、ピースボートクルーズ史上最大の客船であり、多くのバルコニーキャビンを備え、お客様や乗組員の物理的距離が十分に確保できる安心・安全な使用客船として、2021年4月の世界一周クルーズより、パシフィック・ワールド号(7万7000トン、定員2419名、旧サン・プリンセス号)を新チャーター船とすることを発表させていただく運びとなりました」
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