<コロナ緊急事態宣言延長>「ゴールポスト」動かす?苦境業者支援急務―立石信雄オムロン元会長

立石信雄    2021年3月7日(日) 6時0分

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首都圏4都県で続く新型コロナウイルス緊急事態宣言が、3月21日まで2週間延長されることになった。経済へのダメージは大きく飲食店など苦境を強いられる人々への一層の支援が急務である。写真は新宿。

首都圏4都県で続く新型コロナウイルス緊急事態宣言が、3月21日まで2週間延長されることになった。予定の7日で解除する論議もあったようだが、安全策をとるという。客観的に見て延長自体はやむを得ないと思うが、経済へのダメージは大きい。飲食店など苦境を強いられる人々への一層の支援が急務である。

首都圏の新規感染者数は「感染急増」を示す「ステージ3」を下回り、医療の逼迫度を示す病床使用率も「感染爆発」にあたる「ステージ4」は皆無となった。政府は従来、ステージ3への移行を緊急事態宣言解除の目安とする考えを示していた。自ら決めた条件を満たしたのに解除しなかったことで、「『ゴールポスト』を動かした」との批判も出ているようだ。これでは飲食事業者をはじめ経営者の多くは先行きを見通せず途方に暮れるばかりだろう。

1月の宣言発動後、感染者数は比較的順調に減少してきたものの、東京都でいえば第3波が始まった昨年11月半ばの水準に戻ったにすぎない。最近は下げ止まりの傾向にあり、いま解除すれば、再燃する恐れがあるという。

経済への影響を考えても、第4波の流行を招かないことが何より大切だ。医療の実情も数字だけからは見えないことが多い。病床使用率が下がったとはいえ、多くの病院は使用可能な病床数を無理して増やしており、重症者の入院長期化などで現場の緊張は続いているという。

感染力が強いとされる変異ウイルスによるクラスターの多発も不安材料だ。全国で広がった場合、最悪どんな事態が予測されるのか。可能な範囲で情報開示してほしい。

2週間後の収束が見えているわけではない。むしろ一部の専門家からは延長幅への疑問の声も聞かれる。感染者数はなぜ減少傾向から横ばいになってしまったのか。壁を突破するためにどんな措置が求められるのか。政府・自治体は検討を急ぎ、順次実行に移していく必要がある。

ワクチン接種が軌道に乗れば流行制御の希望が拡がるが、スケジュール通りの調達が遅れているという。死亡も含む副反応が疑われる重篤事例が複数出ているとされる。当局は実態と因果関係を包み隠さず開示してほしい。

緊急事態宣言の延長を2週間とした理由もわかりにくい。3月は卒業や入学、人事異動シーズンでイベントの多い時期だけに感染抑止効果は小さいとの見方もあるようだ。

改正新型インフルエンザ対策特別措置法のもとで、宣言に準じた「まん延防止等重点措置」も果断に実施すべきであり、同法の運用基準の見える化を求めたい。

回復したコロナ患者を別の病院に移して病床を確保するなど、医療機関相互の役割分担と連携強化の取り組みを引き続き進めてもらいたい。

厚労省関連の専門家組織の分析では、首都圏では発生源がよくわからない集団感染が目立つという。感染者の急増で一時縮小を余儀なくされた疫学調査の態勢を立て直し、感染源の特定に努めてほしい。併せてクラスターが多発している高齢者施設や病院での定期的な検査に加え、感染リスクが高いとされる場所や集団を対象とする検査も速やかに実行に移すべきである。

<直言篇153>

1959年立石電機販売に入社。1965年立石電機(現オムロン株式会社)取締役。1995年代表取締役会長。2003年相談役。 日本経団連・国際労働委員長、海外事業活動関連協議会(CBCC)会長など歴任。SAM「The Taylor Key Award」受賞。同志社大名誉文化博士。中国・北京大、南開大、上海交通大、復旦大などの顧問教授や顧問を務めている。SAM(日本経営近代化協会)名誉会長。エッセイスト。

■筆者プロフィール:立石信雄

1959年立石電機販売に入社。1965年立石電機(現オムロン株式会社)取締役。1995年代表取締役会長。2003年相談役。 日本経団連・国際労働委員長、海外事業活動関連協議会(CBCC)会長など歴任。「マネジメントのノーベル賞」といわれるSAM(Society for Advancement of Management)『The Taylor Key Award』受賞。同志社大名誉文化博士。中国・北京大、南開大、上海交通大、復旦大などの顧問教授や顧問を務めている。SAM(日本経営近代化協会)名誉会長。エッセイスト。

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