<コラム・莫邦富の情報潮干狩り>二つの正月をもつ在日中国人の新年の食卓に見る食の多文化時代

莫邦富    2021年1月22日(金) 18時20分

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新年の食事のことを言うと、やはりおせち料理は避けて通れない。今回はおせち料理を通して在日中国人の食卓事情と中華レストランの試みをチェックしてみたい。写真は料理研究家・小薇さんのおせち料理。

新年早々、新型コロナウイルス感染拡大により、東京をはじめかなりの都府県が緊急事態宣言発令状態に入った。外食はもちろんのこと、例年と比べて回数が激減したわずかな新年会もキャンセルとなった。三密状態を避け、コロナ感染者数を減らす作戦のためと人々は自らに言い聞かせて納得するしかない。

在日中国人社会はまるで減らされた新年のだんらんや新年会の楽しみを取り戻すかのように例年よりもっと新年の食事に力を入れたような気がした。食への熱意とこだわりを見て、遠い昔に聞いたある日本人の感想を思い出した。

1990年代後半、母校・上海外国語大学に外国人教員として来られた日本人教師は、当時の中国人の日常の食生活と新年の食事へのこだわりを見て、「中国人は貧乏ですけれども、その食生活は決して貧しいものではありません」と感想を述べた。それを聞いた上海外大の同僚はすごく納得してこの感想を私に伝えた。私もなるほどとうなずいた。こうしてこの感想は中国人の食生活に対する私の基本認識の一つにもなった。

■在日中国人の食卓事情と中華レストランの試み

1990年代初期、私は改革・開放路線実施後、海外へ移住した中国人を「新華僑」とネーミングした。同時に、『新華僑』『商欲』『昇竜資本』『蛇頭』など一連の書物を出版し、新華僑の存在を世に広げた。数十年たったいま、経済状況はもちろん、文化、習俗などの面においても日本社会に溶け込んだ在日中国人(便宜上、日本に帰化した中国人も含める)の新年のスタイルを見ると、相当日本的になっている。

新年の食事のことを言うと、やはりおせち料理は避けて通れない。今回はおせち料理を通して在日中国人の食卓事情と中華レストランの試みをチェックしてみたい。

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