如月隼人 2022年2月28日(月) 23時20分
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ロシアの行動は許せない。しかし「米国などはキューバ危機から何も学ばなかったのか」とも思えてしまう。写真はキューバ危機の当事者の1人だったキューバのフィデル・カストロ首相(肩書は当時)。
ここでもう一つ考えておきたいことがある。古くから大国と大国が直接の衝突を避けるために設けてきた緩衝地帯という存在だ。よく知られるのは、19世紀においてベトナムを植民地化したフランスとビルマ(原・ミャンマー)などを植民地化した英国が、直接衝突する危険を軽減するためにタイを緩衝地帯として「互いに手を出さない」ことを取り決めたことだ。
緩衝地帯と言っても、完全に中立の立場とは限らない。例えば東西冷戦時代の欧州では、西側陣営のNATOと、東側陣営のワルシャワ条約機構が厳しく対立した。米軍はNATO域内に駐屯し、ソ連軍はワルシャワ条約機構域内に駐屯した。しかし相手側を軍事攻撃することはなかった。東側がNATOを攻撃すれば米国が本腰を入れて乗り出す、逆の場合にはソ連が乗り出す、という情勢だったからだ。その結果として、米国もソ連も若干の余裕をもって欧州情勢を眺められたわけだ。そのことは、米ソが直接の軍事衝突を回避するための一助になったと言ってよい。その意味で東西冷戦時代の西欧と東欧は、米ソにとっての緩衝地帯の機能を有していたと言うことができる。
■米国および西側諸国は「キューバ危機」から何を学んだのか
ウクライナはロシアとの、とりわけ長い国境線のある国だ。ロシアにとって、最低限でも中立に近い緩衝地帯として、絶対に確保せねばならないと考える存在ではなかったのか。少なくともロシアはそのように認識してきたのではないのか。だとすれば、「ロシアの目」には、ウクライナがなしくずしに西側に接近すれば緩衝地帯としての機能が喪失するように見えていたのではないのか。
仮にウクライナがNATOに加盟すれば、米軍がウクライナに進出する可能性がある。ロシアとウクライナの地理上の関係は、米国とキューバの関係に相当する。違うのは、ウクライナはキューバと違って「封鎖」ができないことだ。つまり、そうなってしまったらロシアにとって「時、すでに遅し」ということになる。
本稿のこれまでの内容を突き詰めて言えば、戦争など破滅的な状況を可能な限り回避するには、たとえ敵対する国でも、とことん追い詰めてはならないということだ。相手が強大な国の場合、とことん追い詰めてしまったのでは破滅的な事態が発生すると考えねばならない。米国をはじめとする西側諸国は一時期から、ロシアを追い詰めすぎていたのでいたのでないだろうか。もっと正確に言えば、ロシアが「西側はわが国を、とことん追い詰めるつもりだ」と判断するようなことを続けてこなかっただろうか。もしそうならば、米国をはじめとする西側諸国は、「キューバ危機」からほとんど何も学べていなかったことになる。
■筆者プロフィール:如月隼人
1958年生まれ、東京出身。東京大学教養学部基礎科学科卒。日本では数学とその他の科学分野を勉強し、その後は北京に留学して民族音楽理論を専攻。日本に戻ってからは食べるために編集記者を稼業とするようになり、ついのめりこむ。毎日せっせとインターネットで記事を発表する。「中国の空気」を読者の皆様に感じていただきたいとの想いで、「爆発」、「それっ」などのシリーズ記事を執筆。中国については嫌悪でも惑溺でもなく、「言いたいことを言っておくのが自分にとっても相手にとっても結局は得」が信条。硬軟取り混ぜて幅広く情報を発信。 Facebookはこちら ※フォローの際はメッセージ付きでお願いいたします。 ブログはこちら
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