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<対談>イノベーション成功の鍵とは何か

Record China    2019年5月31日(金) 17時0分

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今回は研究環境をめぐって研究者の立場から天野浩名古屋大学教授に、それを支える文科省の立場から鈴木寛元文部科学副大臣に、研究現場の現状と未来について語っていただいた。写真は天野浩(左)鈴木寛(右)。

実は、私は博士号を3年間で取れませんでした。3年の間に学術論文を書かなければいけなかったのですが、私はp型といって、LEDに必要な技術を何とか実現させようと、そればかりしていて、3年で修了できなかったのです。そんな私を助手にしていただいて、研究を続けることができたのは、赤崎先生と名古屋大学の援助のおかげです。

――若者の研究力低下が指摘されていますが、一因として、大学の研究環境が挙げられています。鈴木先生はその点、どうお考えですか。

鈴木:天野先生が助手になられたのは、何年ぐらいですか。

天野:1989年です。

鈴木:その頃までは、国立大学に、若い人たちのポストがありました。1989年というのは、日本経済がバブル絶頂期で、これが1992年ぐらいから、崩壊します。そして、日本国政府でいえば、財政赤字がどんどん積み上がっていきます。もちろんわれわれは、未来への投資をしたいわけですが、研究予算、あるいは高等教育予算の伸びを抑えざるを得ない局面に入っていきます。そのことはすなわち、大学における、若い人たちに対するポストを十分に用意できないことや、さらに言えば、そういう財政赤字の中で、公務員の給料を上げるのがなかなか難しくなります。一方で、民間の企業はどんどん給料が上がっていきますから、優秀な学生が、修士までは行くけれど、なかなか博士に行ってくれないという悪循環がおこっています。これが、われわれの悩みの種です。

天野浩

<実験の失敗は苦にならない>

――先日、濱口道成先生(JST理事長)にインタビューしたのですが、「天野先生は25歳のときに、1500回も失敗している」ということをおっしゃっていました。先生はその「失敗」の意義をどうとらえていらっしゃいますか。

天野:学生は単純ですから、自分が興味のあることは全然苦にならない。何回も何回も実験をして、ねらったとおりにいくことはほとんどないわけですが(笑)、私はそれが面白くて、失敗とは思わずにいました。ですから、気持ちがめげてしまうことは全くなかったのです。

もう1つ、これはあまり話していないのですが――というのは、赤崎先生に「話すな」と言われているので……(笑)。先生は、私が結晶をつくると、「どんなのか、見せてみろ」と言うからお見せするのですが、私のつくった結晶は白い汚いものばかりだったのです。「君のつくる結晶は、いつもすりガラスみたいだね」と言われ、それが悔しくて、悔しくて、何とか見返してやろうと思って頑張ったというのも実はあります(笑)。

――鈴木先生は、このようなエピソードをどうとらえていますか。

鈴木:1つのことをコツコツやっていることに対して、周りが大らかに見守るということが非常に重要だと思います。20世紀の日本は、そういう大らかに見守る環境、雰囲気が、社会全体にありました。「象牙の塔」という言葉には良い意味と悪い意味の両方がありますが、研究者が、そこに籠って一生懸命、何かよく分からないけど、真理を探究して頑張っている。それを、20世紀の日本社会は大らかに、市井の人たちが見守ってくださった。それが21世紀に入って、全体的に経済的にも苦しくなってきて、何をやっているのか分からないことに対しての大らかさがなくなってきました。

<中国人留学生の今後について>

――天野先生の研究室では、多くの中国人留学生を輩出したと聞きますが。

天野:私が名古屋大学に移ったのが2010年ですが、その頃から中国人留学生が増えてきて、今は留学生といったら中国からというくらい、非常に多いです。中国の皆さんは、勉強はよくできます。ハングリー精神は、日本の学生よりもずっと強いです。ただ、実験をあまり経験されていない方が多いので、最初は結構失敗しますね(笑)。

――鈴木先生は、日本における中国人留学生の今後についてどのようにお考えですか。

鈴木:私も、東大や慶應で中国人留学生に囲まれて毎日を過ごしています。中国人留学生の印象は、天野先生と同様、非常に熱心に勉強するのですが、「自由に考えてごらん」というと、少しとまどった顔をします。自由に考えるのが苦手なようです。私がお題を出せば、それに対する答えは素晴らしいです。だけどテーマ自体を自由にと言うと、すごく混乱した顔をします。

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