<コラム>「中国・電子商取引法」全文日本語訳―2019年1月1日施行、越境ECにも大きな影響か

如月隼人    2018年11月1日(木) 21時20分

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中国では2019年1月1日に「中華人民共和国電子商務法(電子商取引法)」が施行される。同法は個人・法人・非法人組織にかかわらず、電子商取引業者に対して登記の義務を定めている。

中国では2019年1月1日に「中華人民共和国電子商務法(電子商取引法)」が施行される。同法は個人・法人・非法人組織にかかわらず、電子商取引業者に対して登記の義務を定めている。そのため、「代購」などと呼ばれる、出先海外で商品を購入して、自国消費者向けに販売する商法は大きな打撃を受ける可能性があるとされている。

ただし、同法は適用範囲を「中華人民共和国領内における電子商取引」としており、越境ECとの兼ね合いについては不明確な面がある。越境ECそのものについては、「各段階の利便度の水準を引き上げ」などと、発展を促進する方針を明記した。

同法は納税の義務も正式に定めた。一方で、消費者や知的財産権保有者の権利保護を強調するなどで、電子商取引を規範化し、一層の発展を促す方針も示されている。税制についていえば、2019年1月1日には個人所得税法(2018年改正版)も施行される。女優のファン・ビンビンさんが脱税で摘発されたことでも分かるように、税制の規範化と厳格な執行は、中国当局が現在、重点を置く分野のひとつと考えてよいだろう。

いずれにせよ、中国の電子商取引法は、対日越境ECなどにも大きな影響を及ぼす可能性がある。そこで全文翻訳を試みることにした。翻訳に際しては、できるだけ原文の論理の運びをそのまま反映させることにしたため、日本語としてはぎこちなくなった部分もある。また、少数ではあるが()内の説明や注をつけた。

同法が、自らの活動の利害関係に関係する皆さまには、原文を確認し、必要に応じて法律専門家の助言を求めるようお願いする。できる限り正確に訳出したつもりではあるが、以下の訳文を利用することによって何らかの影響を被った場合にも、責任を負うことはできないことをお断りしておく。

【中華人民共和国電子取引法】

第一章 総則

第1条 電子商取引の各方面の主体の合法的権益を保障し、電子商取引行為を規範化し、市場の秩序を維持し、電子商取引の持続した健全な発展を促進するために、本法を制定する。

第2条 中華人民共和国領内の電子商取引活動に対し、本法を適用する。

本法が指す電子商取引とは、インターネットなど情報ネットを通じて商品を販売する、またはサービスを提供する経営活動を指す。

法律・行政法規に商品販売やサービス提供についての定めがあれば、その定めを適用する。金融商品類及びサービスが、情報ネットを用いてニュース情報・音声や映像番組・出版および文化商品などの分野の内容のサービスを提供する場合には、本法を適用しない。

第3条 国家は電子商取引という新業態の発展を奨励し、新たなビジネスモデルを創造する。国家は電子商取引の技術の研究開発と応用の推進を促進し、電子商取引の信用体系の樹立を推進し、電子商取引が刷新発展に有利な市場環境を造営する。国家は電子商取引に質の高い発展をもたらし、日増しに高まる人民によるすばらしい生活への求めを満足させ、開放型経済を構築するために十分な作用を発揮する。

第4条 国家は、オンライン・オフラインのビジネス活動を平等に扱い、オンライン・オフラインの融合した発展を促進する。各級人民政府と関係部門は差別的政策措置を取ってはならず、行政権の乱用により市場競争を排除したり制限してはならない。

第5条 電子商取引の経営者は経営活動に当たり、自主・平等・公平・信頼の原則にのっとり、法律と商業道徳を遵守せねばならない。電子ビジネスの経営者は消費者の権益保護・環境保護・知的財産権の保護・インターネットの安全と個人情報の保護などの分野で義務を果たさせねばならない。電子ビジネスの経営者は製品とサービスの質についての責任を引き受け、政府と社会の監督を受け入れねばならない。

第6条 国務院の関係部門は職責の分担にもとづいて、電子商取引の発展の促進と管理監督などの作業に責任を持つ。県級以上の地方の各級の人民政府は担当する行政区域の実情に即して、担当行政区域内の電子商取引の部門の職責を分割してよい。

第7条 国家は電子商取引の特徴に合致する協同管理体系を樹立し、関連部門・電子商取引の業界組織・電子商取引経営者・消費者などが共同で参加する電子商取引市場の管理体系の形成を推進する。

第8条 電子商取引業界の組織は、自らの規則にもとづき自律的に活動し、健全な業界規範を設立し、業界の信用を増進し、業界経営者の公平な参加と市場競争を牽引する。

第二章 電子商取引経営者

第一節 一般規定

第9条 本法が称する電子商取引経営者とは、インターネットなど情報ネットワークを通じて商品の販売またはサービスの提供の経営活動を行う自然人・法人・非法人組織を指し、電子商取引プラットフォームの経営者・プラットフォーム内の経営者・自らウェブサイトを開設する者・その他のインターネットサービスにより商品を販売またはサービスの提供を行う電子商取引経営者を含める。

本法が称する電子商取引プラットフォーム提供者とは、電子商取引において二者の、または三者以上にインターネット上の経営場所・取り引きの仲介・情報発表などのサービスを提供し、取り引きを行う二者または三者以上が独自に取り引き活動を展開する場を提供する法人または非法人組織を指す。

本法が称するプラットフォーム内経営者とは、電子商取引プラットフォームを通じて商品の販売またはサービスの提供を行う、電子ビジネスの経営者を指す。

第10条 電子商取引経営者は法にもとづき、市場主体としての登記をせねばならない。ただし、個人が自家産の農業副産物や家庭での手工業製品を販売する場合、個人がみずからの技能にもとづき許可を得る必要のない住民向け労務やごく少額の取り引きを行う場合には、法律と行政法規に照らして登記を必要としない除外例とする。

第11条 電子商取引経営者は法にもとづき納税義務を履行せねばならず、かつ法にもとづき税の優遇を享受する。

前条(第10条)に定められた市場主体登記の必要ない電子商取引経営者は、初めての納税義務が発生した後、徴税管理の法律行政法規の規定にもとづき税務登記の申請を行い、事実通りに申請して納税せねばならない。

第12条 電子商取引経営者は経営活動に従事するに当たり、法にもとづき行政の許可が必要な場合には、法にもとづき行政許可を取得せねばならない。

第13条 電子商取引経営者の商品の販売やサービスの提供は、人身の保障と財産の安全の要求と、環境保護の要求に合致していなければならない。法律や行政規則が禁止する商品の販売やサービスの提供は許されない。

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